I traveled in Netherlands and Belgium in 1995 and 1998.
However, I took only several pieces of photographs of the power transmission line.
Therefore, I did not show it in this homepage.
Mr. Koji Akasaka of my close friend traveled in Benelux three countries in August, 2012.
He took many power transmission line photographs in the trip, and he donated the photographs for this homepage.
Thanks to the photographs, I was able to show this page.
当サイト開設者は、オランダおよびベルギーへの旅行経験があるものの、送電線の写真は数枚ほどしか撮影していなかったので「海外の送電線」シリーズには掲載していなかったが、この度、懇意にしている知人の赤坂広二氏が2012年8月にベネルクス3国を旅行された際に撮られた送電線写真を提供していただけたので早速掲載することとした。
赤坂広二氏は今回、オランダのアムステルダムからベルギ-のブリュッセル、ブル-ジュ、ナミュール、ディナンとルクセンブルクを訪問し送電線写真を撮られた。
以下にその写真を当サイト開設者が撮った写真と共に国別、電圧別に掲載する。
ベネルクスは、ベルギー、オランダ、ルクセンブルクの3か国の集合を指し示す名称で、この3か国はいずれも立憲君主制を採用している。
周辺の国に比べて国土が狭いという特徴があり、3か国すべてを合わせても、国土面積は隣国ドイツの1/5、フランスの1/9程度に過ぎない。
このため、この3か国は大国に対抗するために緊密な経済協力を行っており、一方でブリュッセルやルクセンブルクはEUの政治的な中心都市を担っている。
公用語は、ベネルクスとその機構においてオランダ語とフランス語が使用されており、そこには、約2,720万人の住民が住んでいる。
1.オランダThe Netherlands
オランダの国土面積は日本の九州と同じくらいで、ヨーロッパ北西部に位置し、東はドイツ、南はベルギーと国境を接し、北と西は北海に面しており、ヨーロッパの交通、交易の要所である。
オランダはリベラルな政策、気風で、人口密度が高い。
土地は、国土の1/4は海面下に位置し堤防により囲まれた低地であるが、世界第9位の天然ガス産出量を誇る資源産出国である。
気象は北海からの風が強く、この風を長らく利用し風車も有名であり、冬季は年によって寒暖の差が激しく、真冬日や氷点下10度以下の寒さになることも珍しくない。
送電系統の運用は、オランダ国営送電事業者テネット(Tenne T)社が請け負っており、2009年現在全国の380kVおよび220kV基幹系統並びにザイトホラント州の150kV系統を所有し運転している。
オランダの電圧階級は、380kV、220kV、150kV、110kV、50kVで、架空送電線こう長は2007年現在8,340kmである。
電力系統は隣国のドイツ、ベルギーと380kVおよび150kV送電線で国際連系されており、ノルウェーとは海底ケーブルで直流連系されている。
電力は主に火力発電により90%が賄われており、総発電設備容量は2008年現在約2,300kWである。
(写真は、アムステルダムの北西、ザーン川沿いの小さな村ザーンセ・スカンスにある昔ながらの風車である)
(1)380kV送電線
オランダの基幹系統は、隣国のドイツと国際連係し、多国間に跨る欧州の送電ネットワークの中で安定した系統運用を行っている。
これら連系送電線の構造はドイツの送電線と共通・類似した設計を採用している。
すなわち、ドイツでは380~400kV送電線はほとんどドナウ型の鉄塔構造が建設されているが、オランダではそれに連系する系統の送電線はドナウ型鉄塔を採用している。
右写真の送電線もドナウ型鉄塔である。
ドナウ型鉄塔の「上アーム」は本来電線取り付け点までの短い長さでよいのであって「下アーム」と同じ長さにする必要はない。
ただ、多くの鉄塔(特に変電所近傍の鉄塔)は頂点の架空地線が1条設計の場合は、上アームを長くしてその左右先端に架空地線を架線し、架空地線を合計3条として耐雷設計を強化している。
右写真は頂点の架空地線を省略し、上アーム先端の2条設計としている。
電線は、欧州で比較的多い逆三角形の3導体方式を採用している。
がいしは比較的小型(直径280mm程度?)の懸垂がいしを使用し一連34個連結である。
また、雷撃線洛時にがいしを保護するアークホーンは省略したシンプルな装置である(欧米ではアークホーン省略装置が多い)。
懸垂がいしをセミストレインがいし装置としているのは、前後径間の不平均張力対策もあるが、クリアランスの縮小効果を期待し、更にわずかだが電線地上高の拡大も期待して採用しているものと思われる。
右写真は上記と同一線路の耐張鉄塔である。
耐張鉄塔では、電線引留位置が懸垂鉄塔に比較してアーム位置まで上がるため、架空地線位置を角のように上方に持ち上げて耐雷効果を考えて懸垂鉄塔と同じ位置関係に保つようにしている。
水平角度外側の左回線では、ジャンパ線の横振れを防ぐためV吊りがいし装置(長幹がいし4本連結)を使用している。
4月下旬にオランダを訪れると、見渡す限り遙か彼方まで一面のチューリップ畑にいろいろな色の綺麗な花が咲いていて、誠に美しく、見事な景色が楽しめる。
(当サイト開設者が1995年4月末に旅行した時の写真である)
(2)150kV送電線
ロッテルダム郊外で撮った垂直2導体方式の送電線で、鉄塔は上記の380kV送電線と同様の設計思想で建設されたものである。
この送電線には、頂部の架空地線が架線されていて、合計3条の架空地線が張られている。
ジャンパスペーサは3個取り付けられており、単導体用微風振動防止ダンパが取り付けられている。
撮影場所は上の写真と近い場所で撮った同一系統送電線の写真である。
電線は単導体である。
写真では分かりずらいが、軽角度箇所の懸垂鉄塔である。
セミストレインがいし装置の適用理由は、上記380kV送電線で述べたとおりであろう。
手前回線は懸垂がいし一連15個のがいし装置であるが、奥の回線は有機がいしを使用している。
上記の送電線の地中ケーブルへの引き下ろし鉄塔である。
2回線6相のうち2相だけが長幹2本連結の2連がいし装置で、他の4相は有機がいしを用いている。
めずらしい混用設計である。
2.ベルギーBelgium
ベルギーの国土面積は日本の関東地方程度で、地形は北部は平野に対し、南部は丘陵地帯が多い。
最高気温が20度を上回ることは多くないとのことであったが、赤坂広二氏が旅行された今年は夏の気温が上がり35度前後で暑かったとのことである。しかし冬期は寒くなるそうだ。
ベルギーの送電電圧は、380kV、220kV、150kV、70kV、36kV、30kVを採用している。
電力供給は、送電システム事業者エリア(Elia)が行なっていて、同社はベルギーの380~150kV送電線のすべてと、70~30kV送電線の94%の送電線設備を所有している。
ベルギーの送電線のこう長は、2008年現在380kVが891km、220kV以下約7,500km(地中線を含む)である。
ベルギーの送電網ネットワークは欧州送電協調連盟(UCTE)の送電網の一部となっている。
なお、ベルギーの総発電設備は2006年現在、1,625万kWで、火力と原子力がそのほとんどを占める。
(写真は、ブルージュのマルクト広場に建っている鐘楼の頂上から市街地を見た写真である)
(1)380kV送電線
写真では分かりずらいが、垂直2導体方式の送電線である。
ベルギー中部のNamur郊外で撮影した。
鉄塔頂部にいかめしい形のアームが付いた架空地線2条設計のドナウ型鉄塔送電線である。
頂部2条の架空地線で耐雷設計は万全なため、「上アーム」はドナウ型鉄塔本来の電線支持点までの短い長さになっている。
ルート近くに空港があるためか、昼間航空障害標識(赤白塗色)と架空地線に球形航空標識が取り付けられていた。
上記と同じ垂直2導体方式送電線である。
ジャンパ線横振れ抑制のためのジャンパ吊りがいし装置(外側相は1連使用、中側相は2連使用)には、懸垂がいしを使用しているため、風によるがいしの浮き上がり防止のために重錘を使用しているようだ。
ベルギーでは、オランダと異なりがいし装置の電線側にはアークホーンを設置している。
上記Namurから100kmほど南東のルクセンブルクに近いArlonで撮った写真である。
ドナウ型鉄塔に片側1回線を架線した線路で、垂直2導体方式の送電線である。
設計は上記と同じものでがいし一連個数は23個である。
使用がいしは、オランダと異なり直径300mm以上の大型のものを使用しているようで、がいし連結個数はオランダで掲載した線路(一連34個連結)と比較し約70%と少ない。
やはり、上記と同様下相ジャンパ線にはジャンパ吊りがいし装置が使用され、重錘が取り付けられている。
ベルギーの北西部、オランダ国境に近いアントワープおよびゲントのある地方は都市化が進展していて送電線ルートを求めるのが困難な地域である。
したがって、その地域の送電線は極力線下用地幅(Right of Way)を狭くする設計を採用している。
そこでは、線下幅の広いドナウ型は採用せず、2回線垂直配列の設計を採用している。
右写真はアントワープ付近で撮影したもので、4回線垂直配列方式の鉄塔に3回線が架線されている送電線を撮ったものである。
電線は水平2導体方式である。
近くに空港があるため鉄塔には昼間航空障害標識(赤白塗色)が塗られており、また架空地線には見えにくいが赤白の球形航空標識が取り付けられている。
上記の写真の近くで撮った写真である。
標準的2回線垂直配列鉄塔に片側1回線だけが架線されている。
航空障害標識も上記鉄塔と同様に塗られている。
右写真はアントワープから70kmほど西に行ったランデゲム(Landegem)付近で撮影したものである。
上記と同様、ルート選定の難しい地域であるため、ドナウ型にせず2回線垂直配列鉄塔を採用している。
がいし装置は、懸垂がいし1連22個連結のセミストレイン型を用いているが、前後径間の不平均張力対策と思われるもののベルギーではほとんどの懸垂鉄塔でこのがいし装置が使用されていることから、このタイプが懸垂がいし装置の標準的設計となっているようにも思われる。
電線は水平2導体であり、これを把持している懸垂クランプのところにジャンパ線のような形状の添え線が見られるが、これは微風振動対策の装置であろう。
ヨーロッパではこの装置をよく見かけることができる。
ベンド点と地表の中間点に無線用アンテナが設置されている。
(2)70kV送電線
ベルギー南東部のルクセンブルク国境に近いArlonで撮った写真である。
がいしはガラスがいしを使用し1連6個連結の2連耐張がいし装置である。
鉄塔取り付け点は2点支持で、金具でがいし装置長さを調節している。
電線引留クランプにはくさび式クランプを使用しているようで、ジャンパ線中央で電線を2重にクロスさせて圧縮接続している。
ベルギー中央部のNamurで撮ったもので、張力が弱い細径電線の送電線のようで、鉄塔根開きが狭く鉄柱線路のような送電線である。
がいしはガラスがいしを使用し1連6個連結のがいし装置である。
ルート分岐点の鉄塔と思われ、左側径間は、手前回線と奥側回線がそれぞれ別々の方向に電線が伸びている。
左右に経過している1回線三角配列の線路が、π引き込みで変電所に引き込まれている引き下げ鉄塔である。
がいしは1連7個連結である。
日本でも類似の設計が各所で見られる。
ドナウ型鉄塔線路の終端鉄塔で、変電所引き込み箇所である。
がいしはガラスがいしを使用し1連6個連結である。
ジャンパ線引き回し箇所には重錘付きジャンパ吊りがいしが使用されている。
3.ルクセンブルクLuxembourg
ルクセンブルクの国土面積は日本の神奈川県と同じくらいで、国土の大部分には丘と低い山地が広がる。首都ルクセンブルクの標高は379mで、年平均気温は、1961年から2000年の30年平均値で8.6度。月別平均気温が最も低くなるのは1月(0.2度)、最も高くなるのは7月(17.2度)である。
かつては鉄鋼や化学といった重工業を中心とした工業国であったが、現在では銀行業や金融サービスを中心とした金融大国である。
また、ルクセンブルクは高度に発達した先進工業国であり、国民一人当たりの年間電力消費量は1.4万kWhで、国民一人当たりで見れば世界で最も電力を消費する国となっている。
送電線は、CEGEDELネット社と、SOTEL Reseau社が所有し、運用している。
CEGEDELネット社は220kVと65kVのこう長560kmの送電線を所有、運用している。
また、SOTEL Reseau社は南西部の220kVと150kVのこう長186kmの送電線を所有、運用しており、ベルギーのELIA社の系統と連係している。
なお、総発電設備容量は2008年現在約167万kWで、最大電力は2007年11月に108.6万kWを記録している。
(写真は、ルクセンブルク市内アドルフ橋近くの旧市街よりボックの砲台方向を撮影したものである。)
(1)65kV送電線
以下の写真は全てルクセンブルク市内で撮影したものである。
がいしはガラスがいしを使用し1連6個連結である。
標準的鉄塔であるが、ルートが直角に曲がる鉄塔のため、アーム幅は一般箇所に対して1.4倍ほど広く設計している。
がいしはガラスがいしを使用し1連6個連結である。
電線引留クランプにはくさび式クランプを使用しているようで、ジャンパ線中央で電線を2重にクロスさせて圧縮接続している。
懸垂クランプのところにジャンパ線のような形状の添え線が見られるが、これは微風振動対策の装置であろう。
ヨーロッパではこの装置をよく見かけることができる。
ドナウ型鉄塔線路の終端鉄塔で、地中ケーブル引き下げ箇所である。
がいしはガラスがいしを使用し1連6~7個連結である。
アレスターは各相ともドナウ型アームにセットされている。
以上に掲載した写真は、ほとんど乗り物の中から撮っており、窓ガラスの反射光が写っていて見にくいものがあるが、ご容赦いただきたい。
最後になりましたが、貴重な写真を提供していただいた赤坂広二氏に厚く感謝を申し上げる次第です。