更新年月日 | 更新内容 |
---|---|
2006.01.12 | コンクリート柱送電線の項更新 |
2006.04.05 | 目次新設 |
2006.06.05 | 直流送電線写真追加(回線数・電線配列による分類) |
2006.08.17 | 説明文を読みやすく修正 |
2006.09.01 | Coffee Break (世界記録、日本記録)を掲載 |
2006.12.17 | Coffee Break (世界記録、日本記録)を修正、「最も長い送電線」追記 |
2007.01.12 | Coffee Break (世界記録、日本記録)を修正、「最古の超高圧送電線」追記 |
2007.02.01 | Coffee Break (世界記録、日本記録)を修正、「世界初(最古)の本格的送電線誕生の物語」掲載 |
2007.02.17 | Coffee Break 「世界初の送電線誕生の物語」をトップページに移動 |
2007.03.14 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「最高(設計)電圧」の旧ソ連情報を修正 |
2007.06.04 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「最も長い径間長」のグリーンランド連情報を掲載 |
2007.06.10 | 解説文修正(ます調→である調に修正) |
2007.08.05 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界一長い送電線」掲載 |
2007.08.17 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界最古の鉄塔」掲載 |
2008.03.11 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界一長い径間長」の所在地地図を掲載 |
2008.03.16 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界最高電圧送電線のルート概要図」を掲載 |
2008.03.25 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界一長い径間長」箇所の写真を掲載 |
2008.06.05 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界最古の鉄塔・サンフランシスコ湾横断超長径間」を掲載 |
2008.08.23 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「世界最高電圧1150KV設備の525KV運用」を追記 |
2009.09.11 | 英文追記 |
2010.01.25 | Coffee Break (世界記録、日本記録)インガ・シャバ線解説掲載 |
2010.06.01 | Coffee Break (世界記録、日本記録)世界最古の鉄塔建設地点(送電鉄塔発祥の地)の写真掲載 |
2010.07.18 | Coffee Break (世界記録、日本記録)世界最長の送電線記載内容更新 |
2011.01.22 | Coffee Break (世界記録、日本記録)「最古の現役送電線」→「最も長く現役稼働した送電設備」表現変更 |
2011.01.25 | 2.交流の種類による分類・・・三相交流リンクファイル追加解説 |
2012.08.02 | 旧ソ連UHV鉄塔写真追加掲載 |
2014.05.19 | Coffee Break 世界記録:世界最長の送電線記事更新 |
2014.08.08 | 鉄塔と鉄柱の区別 掲載 |
2015.02.10 | 世界記録、日本記録:世界初の全線鉄塔使用送電線、解説掲載 |
架空送電線の分類と規模 "Classifications and scales" about power transmission lines
CONTENTS
分類Classifications
- 電気の種類による分類Classifications based on electric kinds
- 交流の種類による分類Classifications based on kinds of alternating current
- 単相交流Single-phase current
- 多相交流(三相交流)Polyphase current(three-phase current)
- 周波数frequency
- 回線数・電線配列による分類Classifications based on kinds of "the number of circuit and the conductor sequence"
- 支持物構造による分類Classifications based on supports structure
- 木柱送電線Wood pole line
- コンクリート柱送電線Reinforced concretr pole line
- 鉄柱送電線Steel pole line
- 鉄塔送電線Steel tower line
- 鉄塔と鉄柱の区別Distinction of the steel tower and the steel pole line
- その他(環境調和形鋼管柱、他)Beautified tower
- 電線構造による分類Classifications based on conductor structure
規模The scale of the power transmission line
- 送電電圧の違いによる規模の大小The change of the scale based on a difference of the power transmission line voltage
- 送電容量による規模の大小The change of the scale based on a difference of the transmission capacity
- 回線数による規模の大小The change of the scale based on a difference of the number of circuit
Coffee Break(世界記録、日本記録)"World records and Japanese records" of power transmission lines
1.電気の種類による分類Classifications based on electric kinds
There is a classification based on an electric kind (alternating or direct current) in the one of the classification methods of the power transmission line.
Most power transmission lines are power transmission lines of the alternating current method.
送電する電気の種類(交流又は直流)による分類がある。
・交流送電線
・直流送電線
送電する電気の種類に応じ、「交流送電線」と「直流送電線」の2種類に分類される。
日本では、ごく一部に直流送電線(津軽海峡横断および紀伊水道横断の送電線などで、その海上部分は海底ケーブル・地中送電線)がある、しかし、大部分の送電線は交流送電線である。
2.交流の種類による分類Classifications based on kinds of alternating current
There is a classification based on a kind of alternating current in the one of the classification methods of the power transmission line.
Most power transmission lines are 3 phase alternating current methods.
There is extremely a few it, but the single-phase alternating current power transmission lines are built, too.
alternating current of the frequency of 50 or 60Hz are used for most power transmission lines.
交流送電線では、交流の種類(単相又は多相交流、あるいは周波数など)でも分類される。
なお、「相(phase)」というのは、送電線など電気回路の中で、周波数は同じだが時間的にずれのある交流電気(位相角が異なる起電力)が複数存在するときの数を数える語(助数詞)である。
例えば、3つの異なる交流電気を発電する発電機は「三相交流発電機」と呼ばれる。
(1)単相交流Single-phase current
我が国では「単相交流送電線」は、まずない。
ただし、配電線の柱上変圧器から各家庭などに引き込みする引き込み線は、三相交流からその内の1相分だけを取り出し、単相の電線路として設置されている。
(2)多相交流(三相交流)Polyphase current(three-phase current)
日本では、ほぼ全ての発電所は、多相交流の一種の三相交流発電機で三相交流(解説をリンクページに示す)を発電しているので、その電気を送る送電線は、ほとんど「三相3線式送電線」である。
一般には3つの交流電気を送るのには、2本づつ計6本の電線を必要とし、帰路の電線を1本に束ねても4本必要になるが、3つの異なった交流電気をわずかな時間差をつけて発電すると、帰路の電線には電気が流れず、帰路の電線は不用になり、3つの異なった電気を3本の電線で送電できる、極めて合理的な性質を利用している。
この三相交流の電気を3本の電線で送電する送電線を、「三相3線式送電線」と称しており、日本の送電線はほぼ全てこの方式の送電線である。
なお、三相交流の電気を3本の電線で送電する一つの単位を「回線」と称している。
(次項の「3.回線数・電線配列による分類」冒頭の鉄塔写真参照)
(3)周波数frequency
また、交流の周波数の違いにより分類することも出来る。
外見では分からないが、交流の周波数(1秒間に+-に変化する電気の変化の回数)が日本では2種類あり、西日本は60Hz(ヘルツ)(0から+になり次に-になり0に戻る変化を、1秒間に60回繰り返す)、東日本は50Hzで、したがって西日本の送電線は「60Hz送電線」、東日本の送電線は「50Hz送電線」である。
その境目は地域別では、富山県、長野県、静岡県(富士川の右岸)までが60Hz側で、新潟県、群馬県、埼玉県、山梨県、静岡県(富士川の左岸)までが50Hz側である。
また、その境目は電力会社で言うと、東北電力、東京電力は50Hz、北陸電力、中部電力は60Hzである。
なお、電力会社はその電力を供給する地域以外にも発電所を設置しており、例えば50Hzの電気を供給している東京電力の水力発電所が長野県にあるが、そこから関東圏に送電する50Hz送電線は60Hz地域の長野県を通過しており、その地域では首都圏向け50Hz送電線と地元供給60Hz送電線が混在している。
この2つの周波数誕生の経緯は下記の通りである。
電気事業草創期・明治20年代には、直流・低圧・小容量の火力発電所を多数設置する方式を採ったが、発電所用地の取得の難航および煤煙による環境汚染の苦情等から電力会社は大容量集中発電方式を採ることを決め、大容量発電機の調達を検討した。
当時の最も大規模な東京電灯会社は1895年(明治28年)、ドイツのAEG(Allgemeine Elektrizitaets Gesellshaft)社製三相50Hz発電機を輸入して浅草に火力発電所を建設した。
一方、大阪電灯株式会社はこれに対抗して2年後の1897年(明治30年)にアメリカのGE(General Electric)社製の三相60Hz発電機を輸入して発電所を建設した。
これに習い続々と誕生する電力会社は地域を代表する上記会社と同じ周波数を選択することとなり、日本を東西に二分する大きな流れとなった。
その後、同じ国のなかに2つの周波数が存在する不便さを解消しようと、周波数統一の動きが度々あった。
最も大きな動きは1914年(大正3年)逓信省周波数統一委員会が全国を50Hzに統一することを決定したことと、終戦の翌年1946年(昭和21年)3月に周波数統一準備調査委員会が当時の商工大臣に対して全国を60Hzに統一する答申を行ったことである。
しかし、周波数変換が経済活動に大きな負の影響を与えるなどの種々の理由から実現に至らず今日に至っている。
3.回線数・電線配列による分類Classifications based on kinds of "the number of circuit and the conductor sequence"
In the one of the classification methods of the power transmission line, there is a classification to be based on a numerical difference of circuit to put on one support.
With 3 phase alternating current power transmission lines, one circuit consists of three conductors.
Therefore, we call the power transmission line "2 circuit power transmission lines" if six conductors are done an overhead wire of by a power transmission line steel tower.
And we call " 3 circuit power transmission lines", if 9 conductors are done an overhead wire of by a support.
And we call the power transmission line that three conductors are arranged horizontally "a horizontal sequence power transmission line".
In addition, we call the power transmission line that three conductors are arranged perpendicularly "a perpendicular sequence power transmission line".
In Japan, 2 circuit perpendicular conductor sequence power transmission line is facilities of the standard shape.
(1)回線数The number of circuits
三相3線式(交流)送電線は、送電する回線の多少でも分類される。
三相交流の電気を3本の電線で送電する一つの単位を「回線」と称するが、外見で支持物にがいしを介し3本の電線(電力線)が張ってある送電線は「1回線送電線」、6本張ってあれば「2回線送電線」といい、一般に3の倍数の電線が張ってある。
同一の支持物に4回線又は6回線、まれにはそれ以上の回線数を張ってあるものもあり、それらは「4回線送電線」、「6回線送電線」などと呼ぶ。
ただ、外見で電線の数を数えるとき、支持物のてっぺんにがいしを介せず電線が1本又は2本張ってあるのが普通だが、この電線は数えない。
鉄塔頂部に直接固定した電線は、「架空地線:がくうちせん」と言い、それには電気を通電させず、雷除けの避雷線である。
(たまたま、写真には架空地線はない)
(2)電線配列Conductor sequence
また、送電線は電線の配列方式によっても分類される。
垂直配列
最も多いのは、2回線送電線で、支持物に左右対称に縦に3本ずつ(1回線ずつ)合計6本の電力線が張ってある。
このような電線の並べ方を「垂直配列」と呼び、これを標準としている。
(本項「3.回線数・電線配列による分類」冒頭の鉄塔写真参照)
水平配列
地域によっては、支持物の高さを低くしたいとか、氷雪条件の厳しいところで電線に付いた雪が脱落する際に電線が跳ね上がり(スリートジャンプという)、直上の電線とショート(短絡)することを防止するため、三本の電線を水平に配置した送電線もある。
このような送電線を、特に「水平配列送電線」と呼ぶ。
写真は、1回線水平配列の送電線が2ルート経過している状況を示す。
電線配列の解説
前述の通り、我が国のほとんどの送電線は三相3線式(交流)送電線である。
そして、「2回線垂直配列送電線」が最も多く、それが標準的形態である。
ところが、技術的には、架空送電線は過酷な自然環境(雷、氷雪、台風など)の影響を受け難くするため、極力地上高を低くし、万一影響を被っても1回線ごとに別ルートとして被害を最小限に抑える設備とすることが望ましい。
具体的には、上述の「1回線水平配列送電線」とすることが技術的にはベストである。
しかし、狭い国土の我が国で、特に電力需要地およびその周辺の市街化進展地域では、土地の有効活用上、横幅の広い送電線と、数多くのルートを施設することは極めて困難である。また、電力会社としても、高価な多くの土地面積を必要とする設備形態は、経済的見地からも非現実的である。
そこで、1回線を垂直配列にすると共に、2ルートを集約して鉄塔の左右に1回線ずつ配置し、「2回線垂直配列送電線」の設備形態を多く採用してきた。
送電線の運用は約100年の歴史があるが、2回線垂直配列の設備形態で万一片回線に事故が発生した場合、隣の回線がバックアップすることで停電に至らずにすむ技術が古くから確立しており、したがって標準的設備形態として採用されて良好な運転実績を残している。
ただ、希には、台風、暴風雪などで鉄塔そのものが倒壊して大規模停電を発生させたり、鉄塔は倒壊しなくても台風の強風によりがいしに海から運ばれた塩分が付着して絶縁性能が低下する塩害により広範囲な停電を起こした例はあり、電力会社はその都度適切な対応策をとっているので、年々その頻度は少なくなっている。
しかし、先般(2006.08.14)の275KV江東線で発生したような、ルールを守らないクレーン船がクレーンを上げて突っ込んだ人災による(2回線にまたがる)大事故に対しては、対策の打ちようがない。
(3)直流送電線の場合In the case of a DC power transmission line
なお、直流の送電線では、+-の2本の電線で1回線を構成する。
設備の形態としては、直流の場合は帰路の電線は架空地線を兼ねて塔頂に架線するので、対地電圧が加えられがいし装置を介して支持物に架線してある電線は、1回線送電線の場合1本となる。
写真は、津軽海峡を横断して北海道と本州を結ぶ直流送電線「北本直流幹線」の写真で、建設当初、帰路となる架空地線2条と、片側の電線1本のみ架線して250,000V(ボルト)(250KV(キロボルト))運転していたときのものである。
直流線送電線の場合、大地に対して片線は「+電圧」、もう片線は「-電圧」を加え、1回線で対地電圧の2倍の電圧で運転することができる(双極という)が、そのときはがいし装置を介して支持物に架線される電線は2本になる。
このときは中性線(帰路)は、やはり架空地線の位置に施設される。
写真は、上の写真と同一送電線で「北本直流幹線」の写真である。
本送電線はその後に増容量が求められ、当初帰路となる架空地線2条と片側の電線1本のみの架線であったが、電線1本を増架してアームの左右に2本架線とし、大地に対して±250KV双極運転とした。
このように、同じ1回線直流送電線でも、電圧が荷電される電線が1本の場合と2本の場合がある。
4.支持物構造による分類Classifications based on supports structure
送電線で一番多い支持物は「鉄塔」で「鉄塔送電線」であるが、鉄塔以外にも下記の支持物が使われており、「木柱送電線」とか、「鉄柱送電線」などと、支持物の種類によって送電線が分類されることがある。
(1)木柱送電線Wood pole power transmission lines
写真は、電圧22,000V(ボルト)(22KV(キロボルト))・1回線・木柱送電線例(左:懸垂型すずらん装柱、右:耐張型水平配列)
木柱送電線は、強度が弱いのでほとんどが1回線装柱である。
(2)コンクリート柱送電線Rainforced concrete pole power transmission lines
写真は66,000V(66KV)1回線送電線例
コンクリート柱は、上記の木柱の代わりにコンクリート柱を用いるもので、その形状は木柱とほぼ同一である。
写真は、懸垂型すずらん装柱の例である。
(3)鉄柱送電線Steel pole power transmission lines
写真は66,000V(66KV)1回線鉄柱送電線である。
鉄柱送電線では、木柱と同様強度が弱いのでやはり1回線装柱が多い。
しかし、支持物に加わる力を支線(木柱写真参照)を設け、それに荷重を分担させ、補強して2回線装柱としているものもある。
写真(右側)は、耐張がいし装置の軽角度形鉄柱、写真(左側)は懸垂がいし装置の直線形鉄柱である。
鉄柱送電線は、柱体が細いので風圧とか電線断線荷重などの水平・横方向の荷重に弱いため、支線(鋼撚り線)を設け、荷重を分担させ補強することが多い。
写真の鉄柱は、柱体自体で全ての荷重に耐える設計で、支線を用いない自立鉄柱である。
(4)鉄塔送電線Steel tower power transmission lines
写真は、275,000V(275KV)・2回線・標準形送電線の懸垂鉄塔例
(左:4導体・V吊懸垂がいし装置、右:2導体・直吊懸垂がいし装置)
鉄塔送電線は、ほとんどの送電線が上下の写真のように「2回線垂直配列送電線」で、この形を標準型としている。
写真は、275KVの送電線で左が4導体送電線、右が2導体送電線で、両線路が並走している。
(「2導体」、「4導体」の説明は、「調査・設計」の項に掲載している)
写真は、275,000V(275KV)・2回線・標準形送電線の耐張鉄塔例(左:4導体、右:2導体)
鉄塔と鉄柱の区別
まず、我が国で鉄塔の最高権威者として活躍された堀貞治氏(1900-1993)が執筆された「送電用鉄塔鉄柱の設計」には、次のように書かれている。
- この区別は、鉄塔は各主柱ごとに、鉄柱は、各主柱共通に1個の基礎を有するものをその区分の標準としているが、実際にはなかなか難しい問題である。
要するに、鉄塔設計標準によって設計されたものは鉄塔であり、鉄柱設計標準によって設計されたものは鉄柱であるとも言えるのであるが、この言い方でも問題がある。
それは、柱の根開きの点で鉄塔と鉄柱は大分異なっている。
すなわち、鉄塔の根開きは1/4.5~1/8程度であるが、鉄柱は1/9~1/12程度が普通である。
と解説している。
また、「電気設備の技術基準の解釈及び解説」第58条「架空電線路の強度検討に用いる荷重」(省令第32条)の解説では次のように記載されている。
- 鉄塔と鉄柱の区別は、鉄塔は各主柱ごとに、鉄柱では各主柱共通に1個の基礎を持つことを標準としている。
なお、鉄柱は鉄塔に比べて一般に根開きが狭少で、かつ、根開きと高さの比率が著しく小さく、鉄塔は原則として支線で補強できないが、鉄柱は支線で補強しても差し支えない等の差もある。
しかし、型などによって明確には分け得ないので、鉄塔といえば鉄塔の設計条件を満たすものが鉄塔であり、鉄柱の設計条件に適合するものが鉄柱と考えて支障ない。
鉄塔と鉄柱の設計条件の違いの主なものを掲げると下表の通りである。
電気設備に関する技術基準を定める省令 | 電気設備の技術基準の解釈 | 鉄塔 | 鉄柱(B種) | 備考 |
---|---|---|---|---|
第6条 (電線等の断線の防止) |
第63条 (架空電線路の径間の制限) |
・170kV未満:600m以下 ・170kV以上:800m以下 ・長径間工事箇所では電圧にかかわらず無制限 |
・250m以下 | |
第32条 (支持物の倒壊の防止) |
・長径間工事箇所では500m以下 | |||
第57条 (鉄柱及び鉄塔の構成等) |
・主柱材部材の厚さ5mm以上 | ・主柱材部材の厚さ4mm以上 | 山型鋼 | |
第58条 (架空電線路の強度検討に用いる荷重) |
・構成材の垂直投影面に加わる風圧力:2840Pa | ・構成材の垂直投影面に加わる風圧力:2350Pa | 山型鋼 | |
第59条 (架空電線路の支持物の強度等) |
・荷重:常時想定荷重の1倍及び異常時想定荷重の2/3倍 ・支線を用いてその強度を分担させてはならない |
・荷重:常時想定荷重 ・支線を用いる場合は、鉄柱自体で全体の風圧荷重の1/2に耐える必要があること |
要するに、構造的に(見た目で)一線を引いてここまでが鉄塔で、その向こうが鉄柱であるとの単純な区分はできず、設計条件でその区分ができるということである。
なお、上記支持物自体の設計の違いとともに線路の経過地条件によっても鉄塔と鉄柱で適用条件の違いがある。
すなわち、「電気設備の技術基準の解釈」で、
- 第88条「特別高圧架空電線路の市街地に於ける施設制限」で径間長の制限が異なる、
- 第92条「特別高圧架空電線路における耐張型等の支持物の施設」で条件が異なる、
- 第95条「特別高圧保安工事」で径間長の制限が異なる、
等の違いがあるので実施設計時に注意を要する。
(5)その他(環境調和形鋼管柱、他)Others
写真は、66,000V(66KV)4回線・環境調和型A型鋼管柱の例
主柱材と電力線アームおよび架空地線アームの調和したデザイン、配色が見事である。
右写真は、66,000V(66KV)2回線・環境調和形鋼管単柱の例
ケーブル引き下ろし柱であるが、ケーブルは鋼管柱の中を通って引き下ろされるたので、スマートで見栄えがよい。
環境調和形支持物としての設計は、鋼管柱の他に各種の鋼材が適用されており、いろいろな形状のものが建設されている。
5.電線構造による分類Classifications based on conductor structure
One conductor is usually used for conductors of one phase.
We call the power transmission line which uses one conductor for one phase "single conductor power transmission lines".
However, with the power transmission line of the large-capacity high voltage, as for the conductor of one phase, there are many cases which plural conductors are used for.
We call the power transmission line which uses plural conductors (2,3,4,6 or 8) for one phase "bundled conductor power transmission lines".
最近では、送電線に用いられる電線は、ほとんど「鋼心アルミより線(ACSR)」で、昔使用した「硬銅より線」は使用しない。
アルミは銅より導電性能はやや落ちるが、軽くて経済的に建設できるのでアルミを使用している。
また、電線の太さは通常、直径が3~4cm程度以下の太さの電線を使用している。
これは、電線の製造条件、建設工事施工条件、および保守・管理条件でこの直径の範囲になる。
もちろん、使用する電線は、裸線である。
電線に電流を流すと抵抗により発熱するが、熱の放散を良くして温度上昇を抑制し出来るだけ多くの電流を流すため、裸線としている。
さらに送電容量を増加させたいきは、送電電圧を一段階上の電圧階級に上げるとか、または電線を複数本束ねて使用し送電容量を増加させる。
一般には三相3線式送電線は、一相に1本(条)の電線を張るが、上記のような送電容量増加の要請、あるいは送電電圧が高電圧のためにコロナ発生防止対策として太い電線を張る必要があるが、細い電線を束ねて使うと太い電線を張ったと同じ効果があるので、一相に複数の電線を束ねて使用することがある。
そこで、電線構造の違いによる分類をすることがある。
・単導体送電線(一相に1本(条)使用)
・多導体送電線(一相に2、3、4、6または8本(条)使用)
右の写真が単導体送電線(154KV)、左の写真が4導体送電線(500KV)である。
左の送電線の方が、電圧が高く、見るからにがっちりして大規模であることが分かる。
なお、多導体の電線構造は、お互いに密着させず電線相互の間隔を40cm~80cm程度離して、その断面は正多角形になる構造とする。
空中で風などの影響で電線が触れないよう、数十メートル間隔でスペーサという金物を取り付け、電線相互の間隔を正確に保持する。(「多導体」については、調査・設計の項で詳細説明する)
1.送電電圧の違いによる規模の大小The change of the scale based on a difference of the power transmission line voltage
The overhead power transmission line uses air as an insulator.
Naked electric wires are put on the air as a power transmission line.
As we raise the power transmission line voltage, we must let conductor ground height increase and must enlarge the space of conductor aspect each other.
Therefore, naturally the supports height rises and opens at the interval of conductor aspect each other when the transmission voltage rises.
And the power transmission line of the high voltage becomes the large-scale facilities.
送電電圧の違いにより、送電線の規模・大きさが違う。
送電線の電圧(電線と電線の間に課電される電圧を言いう)は、通常低いもので22,000V(22KV、2万2千ボルト)から、最も高いもので1,000,000V(1000KV、百万ボルト)のものがある。
同じ地域の送電線は、ほぼ倍々の電圧で、地域ごとに統一された電圧の送電線が施設されている。
送電線を代表する電圧、すなわち公称電圧の種類
- 22,000V(22KV)
- 33,000V(33KV)
- 66,000V(66KV)、または、77,000V(77KV)
- 110,000V(110KV)
- 154,000V(154KV)、または、187,000V(187KV)
- 220,000V(220KV)、または、275,000V(275KV)
- 500,000V(500KV)
- 1,000,000V(1,000KV)
上記の「または」は、地域によって二つの内どちらか片方の電圧が採用されていることを示す。
国の制定した技術基準では、これら電圧はすべて「特別高圧」に分類されるが、架空送電線専門分野では170KV以上を「超高圧」と呼んでいる。
また、1000KV送電線のことを特に「超超高圧:UHV (Ultra High Voltage)」と呼んでいる。
なお、欧米では、公称電圧345KV~700KV送電線のことを、EHV(Extra High Voltage)と呼んでいる。
電圧階級の採用は、電力会社によって違いがあり、東京・関西・九州電力の66KV以上の例を挙げれば次の通りである。
- 東京電力:66-154-275-500-1,000KV
- 関西電力:77-154-275-500KV
- 九州電力:66-110-220-500KV
なお、1,000KV(100万V)送電線は、東京電力で既に建設されているが、現在は50万Vで運用されている。
各電力会社別の送電設備の規模(電圧別設備長さ、支持物基数など)は、毎年発行されている「電気事業便覧(電気事業連合会統計委員会編)」に掲載されている。
我が国の全電力の所有する架空送電線のこう長は、昭和26年の会社発足当時は約4万2千Kmだったが、平成16年現在では社会・経済の発展に伴い約2倍の8万3千Kmに増加している。
一方、支持物基数は、送電線が増加したにも拘わらず昭和26年の約40万基に対して、平成16年では約35万基に減少している。
この理由は、昭和26年に木柱が6割以上の約26万5千基あったのがほとんど姿を消し、径間長が2~3倍長くとれ、かつ木柱の1回線2ルート送電線を2回線1ルート化して支持物数を減少できる鉄塔に移行したためである。
架空送電線は、空気を絶縁体・絶縁物として空中に裸の電線を張っており、電圧が高ければ地上と電線の距離・高さを増加させなければならず、電線と電線相互の間隔も広げていかないとショート・短絡してしまう。
したがって、電圧が高くなると当然支持物の高さも高くなり、電線相互の間隔も広がり、大規模な設備になる。
支持物の大きさは、適用箇所に応じ大きく変化するが、標準的な2回線垂直配列・鉄塔送電線の場合で、概略下記の通りである。
電圧階級 Voltage rank |
鉄塔高さ Steel tower height |
腕金幅(左右電線間隔) Arm width |
鉄塔質量 Steel tower mass |
---|---|---|---|
66~154KV級 | 30~50m程度 | 4~8m程度 | 7~30t程度 |
220~275KV級 | 50~60m程度 | 12~16m程度 | 30~50t程度 |
500KV級 | 70~90m程度 | 19~26m程度 | 50~100t程度 |
1000KV級 | 90~110m程度 | 32~39m程度 | 200~400t程度 |
なお、支持物に電線を留めるには、絶縁性能が良い磁器製の「がいし」を電線と支持物の間に使用して電線を支持物に固定する。
写真は、1000KV設計送電線と500KV送電線が併走していて、かつ、154KV+66KVの4回線送電線と154KV送電線の2ルートを直角横断しているめずらしい箇所の写真である。
写真の場所は、栃木県矢板市地内で、東北新幹線に乗車すると宇都宮駅と那須塩原駅の丁度中間地点で、列車の東側窓(下り列車の場合は右側窓)からよく見える。
1000KV設計送電線と500KV送電線は、154KV送電線を横断しており若干鉄塔高が高くなっている。
電圧の違いで送電線規模が異なる様子がよく分かる。
2.送電容量による規模の大小The change of the scale based on a difference of the transmission capacity
In the case of a power transmission line of the same voltage, we must set up big conducting wire to make transmission electricity big.
When we make a conductor big, we will use an extreme strong big member for a steel tower.
Therefore, with the power transmission line of the same voltage, scales of the structure are different with size of the transmission capacity (the thickness of the conductor).
As for the power transmission line that the voltage is low, a conductor to use is thin, and the transmission capacity is small, and the scale is generally small.
As the voltage of the power transmission line rises, the used conductor is big, and the transmission capacity tends to grow big drastically, and the scale is big drastically.
同じ電圧の送電線でも、送電電力を大きくするためには、太い電線を張らなければならず、鉄塔は強度の強い太い部材を使用することになるため、送電容量の多少によって構造規模が異なる。
一般的には、電圧が低いものは送電容量は小さく、電圧が高くなるにしたがって大容量となる傾向にある。
最近では、送電線に用いられる電線は、ほとんど「鋼心アルミより線(ACSR)」で、昔使用した「硬銅より線」は使用しない。
また、電線の太さは直径が3~4cm程度以下の太さの電線を使用する。
もし、送電容量を増加させたいときは、送電電圧を一段階上の電圧階級に上げるか、または電線を複数本束ねて使用し送電容量を増加させることになる。
同じ電圧の送電線でも、電線を太くしたり、複数本束ねて使用すると、電線重量が増加するとともに、電線が受ける風圧による大きな荷重が支持物に加わり、支持物を頑丈に設計するため、設備の規模が大きくなる。
具体的な数値を挙げれば、以下の通りである。
(右の2つの鉄塔比較写真は、大凡の鉄塔高さ比率で掲載している。)
●小さい規模のものの例
電圧66KV、使用電線ACSR 120m㎡単導体の送電線は1回線当たり42,000KW(4万2千キロワット)の送電容量がある。
●大容量のものの例
電圧1,000KV(100万V)設計で500KV(50万V)運転のとき、使用電線ACSR 810m㎡,8導体の送電線は1回線当たり9,200,000KW(920万キロワット)の送電容量がある。
なお、この送電容量の数値は、電線抵抗で電線の温度が上昇しても、ACSRの場合は90℃を超えない範囲で送電出来る容量(熱容量)を示している。
送電容量は電線の温度上昇の条件のほか、送電系統の「系統安定度」により制約を受け、電力系統に接続された送電線の送電容量は、必ず熱容量よりも少なくなる。
3.回線数による規模の大小The change of the scale based on a difference of the number of circuit
The power transmission line has basically most "2 circuit power transmission lines", and it is a standard form in Japan.
However, there is the thing that we put the conductor of plural routes on the same support from the viewpoint of "utilization of the land" and "construction costs reduction".
The power transmission line is seen a lot in the area where right of way security in the suburbs of the city is difficult.
We call it "4 circuit power transmission lines" if we grind two "2 circuit power transmission lines" together.
The facilities become large.
There are not many 6-8 circuit power transmission lines, but it is built in Japan.
送電線は、基本的には「2回線送電線」が最も多く、それが標準的形態である。
しかし、網目のように張りめぐらそうと計画する送電線は、土地の有効利用の観点、および建設工事費低減の経済的観点から、平行して複数ルートが計画されている部分について隣の送電線と一緒にして、同一支持物に両ルートの電線を張ることがある。
特に、都市近郊の送電線用地確保が難しい地域で見られる。
ただ、多回線の送電線は、構造が大型になり、厳しい自然環境に曝される送電線として保守運用上問題が多いのと、回線間で電気的干渉があり、やはり保守運用上問題が多く、極力回避している。
2回線の二つの送電線を一緒(併架と言う)にすれば「4回線送電線」となり、設備が大型になる。
これら多回線送電線は6~8回線等もある。
併架する送電線の電圧は、同一電圧のものと異なる電圧のものがある。
電圧が異なるときは、高い電圧の送電線が上部に施設され、低い電圧のものが下部に施設されるのが一般的である。
右の写真は275KV(上部)と66KV(下部)の併架鉄塔である。
また、異なる送電線が交差する交差点に規模の大きな支持物を建て、交差点のみ併架することもある。
一般的には、275KV送電線の鉄塔高さは50~60mであるが、右写真の鉄塔高さは4回線送電線で規模が大きいので88mある。
しかし、交差点に別々に2基の鉄塔を建てるのに比較して経済的である。
"World records and Japanese records" of power transmission lines
手元にある資料・データから各種の記録を推測してみる。
まず、間違いなさそうな記録は断定し、推測の域を出ないものは私見で推定した。
項目 | 世界記録 World records |
日本記録 Japanese records |
備考 |
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最古の送電線 The oldest power transmission line |
The country which built 3 phase alternating current power transmission lines first in the world is Germany. 15kVラウフェン-フランクフルト線(ドイツ)
世界で最初に3相交流送電線を建設したのはドイツである。 |
11KV沼上線
(木柱、硬銅単線) 11KV黒瀬川広島線
(木柱、硬銅単線) |
ドイツのNewsは、The Electrical World誌、電気学会雑誌第39号(1891.11.20・明治24年発行)などの文献に基づく。 |
最古の鉄塔 (写真のみ) The oldest steel tower (there is a photograph) |
The world's first steel tower was built in State of California in U.S.A. in 1901. 60kVノースフォーク-オークランド線(アメリカ)
世界初の鉄塔は、1901年、カリフォルニア州で建設された。 (全線鉄塔使用) 60KVナイヤガラ-トロント線(カナダ)
また、全線鉄塔を使用した初の送電線は、1905年、カナダのトロント&ナイヤガラ電力(Toront & Niagara Power Company)が建設した60KVナイヤガラ-トロント線(ナイヤガラ滝~トロント間、約120Km、2回線鉄塔、2ルート、計4回線)である。 |
55KV駒橋線
東京電灯により1907年(明治40年12月)に駒橋発電所(15,000KW)から早稲田変電所迄の76Kmに建設。木柱及び鉄塔22基。 |
(世界最古の鉄塔) アメリカのNewsは、The Electrical World誌、の関連記事に基づく。 |
最古の鉄塔 (現物あり) The oldest steel tower (it exists) |
It is steel towers used for a power transmission line (Necaxa~City of Mexico~El Oro) built in 1905. 60kVネカクサ-エル・オロ線(メキシコ)
全線鉄塔を使用した初の送電線は、1905年、カナダのトロント&ナイヤガラ電力(Toront & Niagara Power Company)が建設した60KVナイヤガラ・トロント線(ナイヤガラ滝~トロント間、約120Km、2回線鉄塔、2ルート、計4回線)であるが、同年の1905年、メキシコでネカクサ(Necaxa)水力発電所~City of Mexico~エル・オロ(El Oro)間、約270Kmほどの60KV送電線でも使用された。 |
46KV塔之沢線
箱根水力電気会社により1909年(明治42年)に塔之沢発電所(3,300KW)と保土ヶ谷変電所間58Kmに建設。鉄塔は58Kmのうち16Km,166基に採用され鉄塔が本格的に使用された。 |
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最も長く現役稼働している送電設備 The transmission facilities which are running for the longest time in the world. |
It is a power transmission line (Necaxa~City of Mexico~El Oro) built in 1905. 60kVネカクサ-エル・オロ線(メキシコ)
1905年、メキシコでNecaxa水力発電所~City of Mexico~El Oro間、約270Kmほどの60KV送電線で、汎用鉄塔で世界最古の鉄塔が使用された。 |
33KV吉白線
山形電気により1911年(明治44年)建設、鉄柱送電線、吉川発電所~白岩発電所間約 6Km。 |
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最古の超高圧送電線 The oldest extra-voltage power transmission line |
The Southern California Edison company in U.S.A. built the world's first voltage 220KV power transmission line to 386km between Big creek power station - Los Angeles in 1923. 220kVピッククリーク-ロサンゼルス線(アメリカ)
アメリカ、Southern California Edison会社が、電圧220KV、ピッククリーク発電所~ロサンゼルス間386Kmに建設し、1923年5月6日(大正12年)に運転開始した送電線(ピッククリーク線)が世界初(世界最古)の超高圧送電線である。 |
275KV新北陸幹線
富山県の新愛本変電所から大阪府の枚方変電所間321Kmを結ぶ送電線で1953年(昭和28年)に運転開始している。 |
アメリカのNewsは、The Electrical World誌、「The story of Big Creek」 等に基づく。 |
最高(設計)電圧 The most high voltage (including the design) |
The former Soviet Union built the 1150kV design power transmission line in 1985 and ran in 750KV at first and did voltage up to 1150kV later in 1988. 1150kVエキバストゥズ-コクシュタウ線(旧ソ連)
旧ソ連では、1985年に、1,150KV設計送電線を、現在のカザフスタン国内の北部で東西方向に位置するエキバストゥズ~コクシュタウ~コスタナイ間(直線距離約800Km)の一部分(エキバストゥズ~コクシュタウ間、こう長432Km)に建設し、同年750KVで運転した。 |
1,000KV設計(500KV運転)西群馬幹線
西群馬幹線は、西群馬開閉所~東山梨変電所間138Kmを結ぶ送電線で、1988年(昭和63年10月)に着工し2002年(平成4年7月)に竣工した。引き続き3線路が建設されている。 |
(1150KV国際連系) ロシアでは、2005年現在で、1,150KV送電線は約950Kmの設備があり、また、カザフスタンでは、旧ソ連が建設した送電線をそのまま所有し約1,420Kmの設備があり、両国間で国際連系して、現在は525KV運転されているそうだ。 (直流の最高電圧)
直流の世界最高電圧は、中国の雲南-広東間に建設され、2009.12.28に運転開始したこう長1,373kmのUHVDCの送電線で、±800KVである。 |
最も長い径間長 (最長径間長) The longest span length |
The world's longest span (the length 5,376m) was built by the power transmission line which crossed the Ameralik fjord of the Nuuk neighborhood in Greenland. The power transmission line was built in voltage 132KV in 1993. (グリーンランド)
世界一長径間は、グリーンランド、ヌーク(Nuuk)近傍のアメレリック(Ameralik)フィヨルドを横断する送電線で、電圧132KV、1993年(平成5年)に建設されたもので、径間長5,376mである。 |
220KV中四幹線
本送電線は、瀬戸内海を横断して、本州の広島変電所と四国の伊予変電所間を結ぶ送電線であり、1961年(昭和36年)に電源開発株式会社により建設された。 |
径間長とは、鉄塔中心から次の鉄塔中心までの鉄塔間の水平距離のこと。 |
最も高い鉄塔 (最高鉄塔高) The highest steel tower height |
The 500KV power transmission line which crossed the Yangtze River in Jiangsu in China was built in 2004. The steel tower built at the Yangtze River crossing recorded the highest length (346.5m) in the world. (中国)
世界一高鉄塔は、中国、江蘇省の長江(揚子江)を挟む江陰市~靖江市間に長江横断の500KV送電線が2004年(平成16年)11月に竣工したが、その長江横断箇所については、鉄塔高346.5m(径間長2,303m、鉄塔質量約4,000t) であり、世界一の送電線高鉄塔であろう。 |
220KV中四幹線
本送電線は、瀬戸内海を横断箇所で海面上42mの電線高さを確保するため最も長い径間長の鉄塔では214mの電線支持点高さ(上相)を必要とし、更にその上部に12mの避雷針高さを加えて、鉄塔高226mとなり、我が国で最も高い鉄塔となった。 |
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最も長い送電線 (最長距離送電線) The longest power transmission line |
The longest power transmission line was built in Brazil in the world and started use on november, 2013. This power transmission line is the voltage of HVDC±600kV, and the length is 2,397km. ±600kV(HVDC)ポルトヴェリョ-アララカラ線(ブラジル)
ブラジルは、アマゾン川流域に膨大な量の水資源を有するが、このたび2カ所の本格的な大容量発電所(Sant Antonio、Jirau)を支流の一つであるマデイラ(Madeira)川に建設した。 |
275KV新北陸幹線
送電線の長さのことを「こう長」と言うが、それが現在最も長い送電線は関西電力が建設し、我が国初の275KV送電線である新北陸幹線であろう。 |
送電線の長さ(起点から終点までの長さ)のことを「こう長」と言う。 一方、「回線延長」と言う言葉があるが、これは「こう長×回線数」のことで、例えば100kmのこう長の2回線送電線では、回線延長は200kmという。 (我が国の記録)
歴史を遡ると、我が国における「こう長」300Kmを超す送電線は、 (世界記録の限界)
長距離送電線の限界は、技術的制約以上に経済的制約によるところが大きく、如何に安い電力単価(建設費および維持管理費合計の評価)で長距離送電できるか、が問われる。 |
送電線(鉄塔)規模 The power transmission line of the biggest scale |
In the world most the big power transmission line of the scale is West Gunma main line (1000KV design -500KV driving) in Japan. 1000KV設計(500KV運転)西群馬幹線(日本)
1000KV設計(500KV運転)西群馬幹線が世界で最も規模の大きな送電線であろう。 |
1000KV設計(500KV運転)西群馬幹線
鉄塔高さは90~110m程度、鉄塔質量は200~400t程度、電線素線条数48条であり、我が国では最大規模であり、かつ世界一の規模であろう。 |
送電線(鉄塔)規模とは、鉄塔に架線される電線(素線)条数、鉄塔平均高さおよび質量など、鉄塔1基当たりの設備規模の総合比較で評価。 |
注1-1世界初(最古)の鉄塔(アメリカ、カリフォルニア州)
Steel towers of world's first (oldest)(U.S.A., State of California
世界初(世界最古)の送電鉄塔は、アメリカ、カリフォルニア州で1901年(明治34年)に建設されたが、それは1,350mの長径間で南北にサンフランシスコ湾の一角を横断する特殊設計箇所であった。
一般箇所は木柱で、木柱では建設できない特殊箇所に限って鉄塔を2基使用した。
写真がその鉄塔であるが、3相1回線で、1相分は予備として設けられた。
当時は、がいしはピンがいしを使用した。
各アーム先端に、1相あたり6個のピンがいしを用い、その頂部に滑車により線路方向に電線移動が可能な装置を設け、電線(鋼ケーブル使用)を載せた。
電線の引き留めは、2基の各鉄塔背後の地上に絶縁性能を有する特殊引留装置を設置し、処理した。
写真は、南側の鉄塔で、丘の上に建設したため、鉄塔高は約20mで済んだが、北側の鉄塔(写真なし)は平地に建設したため、約68mの高鉄塔となった。
「世界最古の鉄塔およびサンフランシスコ湾横断超長径間」について、その詳細をリンク先ページで解説する。
下記をクリックすると、見ることが出来る。
【世界最古の鉄塔およびサンフランシスコ湾横断超長径間】を掲載
注1-2世界初(最古)の全線鉄塔線路(カナダ、オンタリオ州)
全線鉄塔を使用した送電線は、カナダで1905年(明治38年)に、ナイヤガラ水力発電所~トロント間、約120Kmに建設された。
この送電線は、三角配列2回線鉄塔で、2ルートが並走した。
この詳細はリンクページに示すのでここをクリックしてご覧頂きたい。
注2世界一長い径間長の所在地地図と写真
An existence place of span which is the longest in the world
世界一長い径間長(世界最長径間長)の所在地は、グリーンランドの首都であるヌーク(Nuuk)から約50km南方にある水力発電所からヌークへ電力を供給する送電線が、アメレリック(Ameralik)フィヨルドを横断する箇所であり、その長さは径間長5,376mである。
その場所を地図上で表示すると、下図の通りで、ヌークから南東方向約23km地点である。
この送電線は、1993年運転開始ししたもので、電圧は132KV、線路こう長56.5km、支持物は1回線設計で一般箇所は水平配列えぼし型鉄塔および懸垂箇所は鋼管H柱が使用されている。
フィヨルド横断の長径間箇所は一相毎の独立支持物であり、予備線を含め4条水平配列とし、電線は、直径40mmの鋼より線を使用している。
(ノルウェーのソグネフィヨルドを横断している世界第2位の長径間箇所の設計と類似している)
なお、その最外側電線の間隔は約190mである。
グリーンランド は北極海と北大西洋の間にある世界最大の島である。その大部分が北極圏に属し、全島の約80%以上は氷床と万年雪に覆われており、居住区は海岸部のみである。
巨大なフィヨルドが多く、氷の厚さは3,000m以上に達する所もある。
デンマーク領だが、自治政府がおかれ、首都は西海岸の南部にあるヌークである。
電力は、首都の中に火力発電所もあると思われるが、カナダ、北欧と同様に、水力資源に恵まれているので、水力発電所の開発が進められているようだ。
世界最長径間長を有するこの送電線も、ヌークから南にある水力発電所の電力をヌークに送電するための1回線送電線であり、そのルート上に東西に横たわる約100kmの長さのアメレリック(Ameralik)フィヨルドを横断せざるを得ず、その横断径間の長さは世界最長の径間長5,376mとなった。
図は、上図のアメレリック(Ameralik)フィヨルド部分を拡大図示したものである。
フィヨルドは、太古の氷河によって深く削り取られた地形で、そこに現在では海水が入り込み、細長い入り江になっており、その両岸は急峻な崖状の地形になっている。
海岸から急斜面で急に標高が高くなるフィヨルド地形は、それを横断する送電線にとっては弛度が稼げるので都合がよく、長径間となっても支持物は比較的低いもので適用可能であり、したがって5キロメートルを超すような径間長でも、特別に強度の強い電線を使用し、耐張がいし設計が可能な範囲で実現できる。
本送電線の場合も、水面横断長は約3.3kmで、両岸から約1kmの地点に支持物を建設しているが、その標高は北側が444m、南側が1,013mである。
最低海面上電線高さは65mであるようであり、弛度は約650m以上とれるので、最大電線使用張力は80tf程度の値で運用可能と思われ、実現可能となったと思われる。
写真は、グリーンランド現地の出版物に掲載されたもののCopyである。
右側が北側で、Nuukに近い方角であり、線路の東側から西側に向かって撮影したものである。
掲載に当たり、説明のため、電線位置が赤色で図示されている。
グリーンランドのインフラ諸設備を建設・運営している所管部署の御厚意で、アメレリック(Ameralik)フィヨルド横断部分の設備写真を提供いただけたので、以下に掲載する。
我々が、いくら現地に行こうと思っても、交通手段を確保することが極めて困難な場所であり、とても間近には見ることの叶わない設備であるので、今回提供を受けた写真は、我々にとって誠に貴重なものである。
おそらく、当該設備の建設保守に関係ない人たちでこの写真を見ることができるのは、世界広しといえども本サイトを閲覧されている方だけであろうと思われるので、訪問・閲覧された皆様方は、誠に幸運であると言えよう。
写真は、長径間箇所の南側の横断鉄塔を撮ったものである。
北極圏に近い高緯度の場所で、太陽が低くく逆光の写真はやや見にくいが、フィヨルドの頂上に横断鉄塔が4基並んで建設されているのが分かる。
鉄塔は1相1基であり、1基は予備の設備である。
その高さは、南側4基および北側4基の計8基についてそれぞれの立地地形により異なり、12~36mの範囲の中で建設されたようだ。
冬期は、極めて過酷な氷雪環境に曝されるため、予備線を1相分建設しておき、万一どれかの相が不具合の場合には、冬期の期間には補修が不可能であるから、健全な線に切り替えて運用するように設計しているようである。
写真では見にくいが、鉄塔間に電線を渡し、下図で分かるように長径間側は、使用する電線の切り替えが自由に出来るようになっている。
右の概念図で分かるとおり、横断鉄塔にはそれぞれ鉄塔間に電線を架線している。
左側の鉄塔間電線だけには、相間絶縁性能を持たせたがいし装置が中間に取り付けられている。
各鉄塔のジャンパ線は、鉄塔間に張られた電線の引留がいし装置先端を使って縁回しをしている。
横断径間の任意の1相が不具合になったときは、ジャンパ線の接続替えをすれば、健全な3相を使用し運転が出来るようになっている。
例えば、最左端の電線が不具合になったときは、左側鉄塔間電線の中間がいし装置をジャンパ線で接続し、中相および右側相のジャンパ線の図中上半分を右側に縁回し変更をすればよい。
なお、写真では写っていないが、背後の鉄塔は、北側も南側も図のようにえぼし型鉄塔が使用されている。
写真は、標高1,013mの南側横断鉄塔の写真であり、鉄塔の右側がフィヨルド横断径間である。
この写真の鉄塔は、上の写真および図面の最も左側の鉄塔である。
この写真では、鉄塔間の架線電線および中間がいしを見ることが出来る。
長径間側・本線引留がいし装置は、最大電線張力80tf程度の高張力に耐える必要があり、おそらく引っ張り強度60tf級の特殊高強度がいしを使用したと思われる4連正方形配列装置である。
がいしは緑色ガラスがいしである。
引留クランプは圧縮接続で、40mm直径の鋼撚り線を引留めている。
微風振動対策として、ストックブリッジダンパを使用している。
なお、手前の正方形の板は、自動観測施設のデータ送受信アンテナではないかと推測される。
上の写真と同一鉄塔である。
この写真を撮影した時期は、10月初旬であるにも拘わらず、氷雪が鉄塔と電線にびっしりと付いており、厳寒期の過酷な気象条件下では更に多くの氷雪が付くであろうことが想像できる。
5,300mを超える長い距離に対しては、径間内の場所によって付着の様相が大きく異なると思われるが、想定着氷荷重は風圧荷重を含め、部分部分で4~40kgf/mの範囲になるものと想定されているようだ。
設計に用いた等価着氷雪荷重は、詳細は不明であるが、上記の範囲の下方に近い値が採られたのではなかろうか。
写真は、上と同じ横断南側鉄塔であるが、最初の写真の最右端の鉄塔である。
この写真は、電圧の荷電されていない予備の相を点検し、終了したところを撮影したようだ。
写真に写っている宙乗り器も5,300mを超える長い距離を、球体航空標識などを躱し(かわし)ながらスムーズに移動しつつ点検を行うために開発されたものであろう、我が国では見られない大型の宙乗り器である。
写真の宙乗り器には、駆動と制動の装置部分が見られないが、この写真撮影の後すぐにヘリコプターでつり上げ搬出運搬される手順のようなので、既に取り外されているのであろう。
さて、この長径間に関しては、建設工事施工でも幾多の困難があったと思われるが、運用開始した以降の保守点検も北極圏に近い過酷な冬期気象条件の中で大変な苦労があると思われ、設備管理の困難な諸問題点の克服にあたっている関係者の方々の努力には敬意を表するものである。
いずれにしも、我々の想像を超える、いろいろな保守運用上の問題点が多々あることであろうと思われ、それらのデータを何れかの機会に見聞できることを期待している。
注3世界最高電圧送電線のルート概要図
A figure of route summary of the power transmission line that the design voltage is the highest in the world
旧ソ連では、1985年に、1,150KV設計送電線を、現在のカザフスタン国内の北部で東西方向に位置するエキバストゥズ~コクシュタウ~コスタナイ間(直線距離約800Km)の一部分(エキバストゥズ~コクシュタウ間、こう長432Km)に建設し、同年750KVで運転した。
更に翌年以降、上記区間内ならびにエキバストゥズの東北東バルナウル方面およびコスタナイの北西チェリャビンスク方面にもルートを延ばして約1,000Kmを建設し、上記のエキバストゥズ~コクシュタウ間(432Km、鉄塔1,100基、平均鉄塔高60m)を第一段階として1988年(昭和63年)に1150KVで運転した。
この1150KV送電線は、旧ソ連のシベリアからカザフスタンを経由してウラルに伸びる基幹系統に属するもので、エキバストゥズ炭田等に建設された大容量発電所の出力を旧ソ連のヨーロッパ地域に向けて送電するために建設されたものである。
すなわち、旧ソ連では、シベリア東部のイルクーツク~クラスノヤルスク~ノヴォシビルスク・バルナウル間では500KV系統が整備され、複数回線が建設されており、また、首都モスクワ~ウラルのエカテリンブルク・チェリャビンスク間も500KV系統が充実していたが、その東西の系統間には500KVが1回線しか建設されておらず、系統連系が貧弱であった。
従って、1150KV送電線は、エキバストゥズ炭田等に建設された大容量発電所の出力を旧ソ連のヨーロッパ地域に向けて送電する目的と同時に、この東西連系を拡充強化するという、両方の目的を達成するために建設されたものであろう。
この1150KV送電線の支持物構造は、1回線設計で平均鉄塔高60mであり、懸垂箇所では、支線付V型ガイタワーで、耐張箇所は1相1基自立鉄塔を使用しており、カナダの735KV線路と同じような設計である。電線は水平配列、架空地線2条、懸垂箇所のがいしは左右外側は直吊りで、中央相はV吊りであり、外側~外側電線幅は42mである。
電線は、ACSR330m㎡ 8導体(素導体間隔400mm、導体束径約1m)、がいしはガラスがいし一連45個(懸垂箇所は1~2連装置)を使用している。
なお、1991年に旧ソ連が崩壊し、経済危機による電力需要の停滞に遭遇するとともにルートの中央部がカザフスタンに分離されたこと等の理由で、1991年以降、電圧を525KVに降圧させて運転している。
ロシアでは、2005年現在で、1,150KV送電線は約950Kmの設備があり、また、カザフスタンでは、旧ソ連が建設した送電線をそのまま所有し約1,420Kmの設備があり、現在、両国間で上記の通り525KVで国際連系して運転されているそうだ。
この写真は、ルート直線箇所に建設された懸垂鉄塔で、支線付・V型ガイタワーである。
がいしは、ガラスがいし一連45個を使用している。
電線は、ACSR330m㎡ 8導体である。
架空地線は2条で、がいしを介して鉄塔に留められている。
がいしがややグリーン色に見えるが、ガラスがいしを使用しているためである。
主柱材は、シングルワーレン結構で、カナダの735kV鉄塔などと同じ造りである。
電線は8導体で、素導体間隔400mm、導体束径約1mであるが、がいし連の電線懸垂ヨークは電線素線間隔をやや広くしている。
このため、第一スペーサは導体束径を無理に約1mまで絞らずにやや広くしていて、正規の8導体用のスペーサが使用できないため、2導体用のスペーサを8個使用した特殊構造になっている。
がいし連は、雷撃に対するがいし損傷防護策としてのアークホーンを省略しており、簡素な設計である。
架空地線は、鉄塔に直接接地させずに標準的懸垂がいしを一連5個連結したがいし装置で吊っていて、常時架空地線に流れる電流は大地に分流させない設計にしている。
注4世界初の1,500kmを超える長い直流送電線・HVDC(コンゴ民主共和国)
A power transmission line of the length more than 1,500km first in the world
世界で初めて1,500kmを超える長い送電線は、アフリカ、コンゴ民主共和国の、インガ・シャバ(Inga-shaba)線である。
インガ・シャバ線は、コンゴ川の河口に近いインガダム水力発電所(滝利用の発電所では世界最大、最終的には3,900万KWを計画)の出力を、建設当時のシャバ(Shaba)州で現在のカタンガ(Katanga)州の有名な銅山都市コルヴェジ(Kolwezi)に送電するために、アメリカの援助により、建設されたもので、超高圧直流(HVDC)送電線である。
電圧:直流+/-500KV、こう長:約1,700Km、送電電力:当面56万KWであり、1982年に建設された。
長距離を送電する送電線は、交流の場合には、要所要所に電気所(変電所、開閉所など)を設け、送電特性改善のため、進相電流供給設備(コンデンサ設備など)を設けたり、系統分岐、系統連系するなど、起点、終点間で複数区間に送電線が分断されるのが普通であり、単一の長距離送電線は希である。
一方、直流は送電特性が良好で長距離送電に適し、起点の周波数変換所から、終点の周波数変換所まで単一(単独)の長距離送電線となるので、長距離世界記録は、直流方式により作られると言える。
本送電線の特徴は、ルートの殆ど全ての地域が人の全く住んでいないジャングル地帯であり、送電線設備に不具合・故障が生じた場合には調査、点検、復旧に多大な時間と労力を要することとなる。
したがって、立木の倒壊、山火事、その他強風による設備被害などを極力受けないよう送電線専用用地(Right of Way)の幅を約80mと広く確保するとともに樹木をほとんど全て伐採している。
また、万一設備被害が発生した場合には、その影響範囲を押さえ込むため「+極電線」と「-極電線」を別々の支持物に架線し、電線間隔を約40m離して同時に被害を受けることがないようにして、何れか片方の鉄塔が被害を受けても健全側の片極送電は可能なように配慮している。
さらに、途中4箇所に開閉所を設けて、「+極電線」と「-極電線」の接続変更および開閉所相互間の片極区間停止が可能なようになっている。
開閉所の場所は、キンシャサ(Kinshasa)近くのセロ(Selo)、キクウィット(Kikwit)、カナンガ(Kananga)、カミーナ(Kamina)である。
開閉所の開閉設備の概要は図の通りである。
この開閉所があることで、ある区間で「+極側設備」が、次の区間で「-極側設備」が同時に損傷したような場合でも、開閉所で損傷区間を切り離し停電させて、健全側の設備を使用して片極運転を行いつつ、安全で十分な復旧時間を確保して修復作業が可能である。
送電線設備概要は上に掲げた「インガ・シャバ線概念図」に示す通りで、鉄塔、電線、がいし等の各概要は以下の通りである。
- 鉄塔は1基当たり電線1条を架線する構造で、ルート直角方向に約40m間隔で2基並列に建設して双極2条の電線を支持しており、全て自立鉄塔である。
- 電線はACSR 524/31m㎡ 3導体(逆三角形配列)で、帰路は大地帰路方式である。
- がいしは直流用懸垂がいしを使用し一連25個連結、懸垂箇所は主としてV吊懸垂装置を使用している。
- 架空地線は1条で、がいしで絶縁されている。
なお、起終点の交直変換所におけるサイリスタ設備はスウェーデンのASEA製とのことである。