アメリカの特殊送電線
アメリカの送電線の詳細は「海外の送電線」 の項をご覧いただきたい。
サンフランシスコ近郊を経過している500kV送電線である。
鉄塔は塔体内側に支線を設けた矩形鉄塔とでも呼ぶような構造である。
電線は2導体であり、がいし装置は標準懸垂がいしを使用し、一連個数は直吊り33個~34個、V吊り36個連結である。
電線相互の水平間隔は約13mで、左右外側の電線水平間隔は約26mである。
右写真は、同上500kV送電線のサンワーキン川河川横断箇所に建設された高鉄塔である。
この写真の鉄塔は、シェラネバダ山脈を水源として南から北上してサンフランシスコ湾に流れ込むサンワーキン川の河口の手前を横断するもので、約780mの長径間箇所に建設されたものである。
径間長はさほど長くないが、航行する船舶のマストからの離隔を確保するため高鉄塔になっている。
画面の左径間が河川横断径間である。
左と中央の2基が同上の500kV支線付矩形鉄塔送電線の鉄塔で、この鉄塔だけがえぼし型を採用している。
右端の鉄塔は、別の500kV送電線路の鉄塔で三角配列鉄塔を採用している。
この写真は、同上の500kV送電線において河川横断高鉄塔の高張力電線を引き留めるために建設されたもので、各相毎に引留用塔体を建設している。
鉄塔の左側が高鉄塔側で、引留がいし装置は高張力電線を引き留めるため4連正方形配列の装置を適用している。
一般径間側は右側で水平2連耐張装置を使用している。
なお、ジャンパ線は一段上に渡した梁から直吊りがいしを吊り下げ塔体接近を回避している。
アメリカ大陸の西側を南北に走るシエラネバダ山脈の山懐に抱かれたネバダ州西部の町リノ(Reno)は、ラスベガスと共にカジノが盛んな町(ギャンブルタウン)として有名であるが、そのリノへ電力を送電する主な送電線として右の写真の345kV送電線が建設されている。
すなわち、この345kV送電線はリノから東北方向にブラックロック砂漠を約250km行った所にある大規模(火力)発電所の出力をリノまで送電するために建設されたものである。
支持物形状は、上部はえぼし型三角配列鉄塔に似ているが、下部は支線付鉄柱であり、総称して支線付鉄柱と呼ぶべきものであろう。
電線は垂直2導体で、がいしは懸垂がいしを用い一連個数V吊り23個、直吊り18個である。
写真から判断すると材質はアルミを使用しているようだ。
シカゴ近郊を経過している345kV2回線送電線である。
765kV1回線鉄塔と酷似の構造をしており、765kV1回線送電線にすぐにでも流用できる構造の線路である。
とにかく架空地線用アームがいかめしく、目立つ鉄塔である。
シカゴの西約50kmの町エオラ(Eola)で撮った345kV2回線垂直配列鉄塔線路である。
市街地化された町の中を通過するので、2回線垂直配列鉄塔を使用している。
一般には、オフセットを付けた鉄塔は中相が最もアーム幅が広く外側に張り出しているが、アメリカの345kV2回線垂直配列鉄塔ではこの写真のように中アームが逆に狭くなった形状になっているものが標準的形状である。
がいし一連個数は18個で標準的設計である。
イリノイ州・ミシシッピー川の東で見られた全くめずらしい送電線である。
下アームから上部には本来無ければならないはずの鉄塔主柱材がない腹材だけの結構の鉄塔で、誠にめずらしい形状の鉄塔である。
電圧は69kVで、がいし一連個数6個である。
デンバーの西の郊外で見られた送電線で特殊な結構をしている矩形鉄塔である。
電圧は115kVであろう、がいし一連個数8個である。
建設時期はかなり古いものと思われる。
中国の特殊送電線
当ホームページ開設者は中国旅行の経験はないが、友人及び知人が北京方面および四川省方面を旅行したときに撮った、誠にめずらしい鉄塔形状の送電線写真を提供していただいたので紹介する。
750kV 2回線装柱・特殊送電線
右写真は、上段アームに水平に4相が配置され、下段アームに2相が配置された2回線送電線である。
鉄塔形状は逆ドナウ型とでも言えるような誠にめずらしい形である。
電線は6導体であり、がいしは耐張がいし装置が2連装置で約40個連結であるので、電圧は750kVであろう。
右写真は、懸垂鉄塔である。
塔体の左右に1回線ずつ計2回線の送電線である。
電線配列は、回線毎に逆三角形配列で、1本のアームに架空地線から電力線2回線分が全て懸垂支持されている。
がいしは、有機がいしを使用している。
アーム幅は片側約25mほどと思われ、全長は50mほどではないかと推測される。
2回線垂直配列の我が国標準的鉄塔構造に比較し、送電線用地幅は2倍ほどに広くなるが、アームが一段でシンプルであり、かつ鉄塔高は低く耐強風および耐氷雪設計上は有利であると思われる。
右写真は耐張鉄塔である。
懸垂鉄塔がシンプルなのに比べ耐張鉄塔はジャンパ線の引き回しのために特殊なアームを設け、極めて複雑な構造になっている。
2回線垂直配列の鉄塔に比較して、この構造では有利な点は殆ど無いように思われる。
ジャンパ線工事は特に手間暇かかるのではないか。
何故このような設計にしたのか、耐張がいし装置を用いる角度鉄塔については、この設計ではデメリットが多いと思われる。
しかし、この電線配列の送電線では、一方で懸垂鉄塔に於ける鉄塔スリム化のメリットが大きいため送電線全体として建設工事費の低減が計れるためこのような鉄塔形状になっても採用したものと思われる。
ただ、線下幅が広いため用地面積は多く必要であり、用地費が高価な地域では、この設計は採用されないであろう。
750kV 1回線装柱・特殊送電線
上記の750kV2回線送電線が1回線送電線となる区間の1回線装柱鉄塔を撮影したのが右写真で、懸垂鉄塔である。
変形えぼし型鉄塔の窓の中に逆3角形配列の3相が架線されているめずらしい鉄塔である。
がいしは全て有機がいしである。
下相は、電線垂直荷重をほとんど水平に近いV吊り角度の有機がいし懸垂装置で吊っており、上2相のがいしに比較して引っ張り強度が格段に強い規格の有機がいしが使用されていると思われる。
鉄塔部材をよく見ると見ると、内側方向に大きな荷重のかかる下相がいし取付け点位置までは、太い部材を使用した強い構造になっているのが分かる。
右写真は、750kV1回線(逆3角相配列)送電線の重角度耐張鉄塔である。
ジャンパ線は、千鳥型に設置したアーム先端に、前掲の2回線鉄塔のジャンパ支持方式と同様に線路方向に補助アームを突き出して有機がいしでジャンパ線を吊架している。
本線の引留がいし装置は有機がいしではなく、懸垂がいしを使用した2連耐張装置である。
この鉄塔も誠にめずらしい構造の鉄塔である。
500kV 1回線装柱・特殊送電線
右写真は、変形えぼし型鉄塔で懸垂鉄塔である。
電圧は、500kVであろう。電線は4導体方式である。
えぼし型の鉄塔で、窓の形が円形に近い多角形であるのがめずらしい。
えぼし型鉄塔の窓の形は、一般的には逆5角形(将棋の駒を逆にした形)であるが、電線配列を3角形にしたためこの形となったと思われる。
この形状に似た鉄塔としては、イタリアのローカル送電線で変電所引き込み箇所に採用されているものがある。(小写真右)
なお、カナダの500kV送電線では、窓の形がほぼ逆三角形になっているものもある。(小写真左)