1.架空・地中接続(分岐)箇所等
154KV淀川東線
淀川東線は、淀川変電所からJR東海道新幹線沿いに南下し、新鳥飼変電所地点を経由して、1.4Kmほど経過した「ふるさと公園」地点で地中線となるが、その接続点となる鉄塔が右写真である。
鉄塔2基を梁で結んで門型鉄塔形状とし、梁から地上に縦ブス状に電線を張り、地上に設けたケーブルヘッドに架空線を引き下ろす設計としている。
写真右方向(淀川変電所側)からの8回線併架送電線のうち、本鉄塔で、上部の154KV4回線が地上のケーブルヘッドに接続され、地中線となる。
下部の77KV4回線は、そのまま左方向に経過している。
8回線の多回線送電線のうち、上部の154KV4回線を、線下用地の地上に設けたケーブルヘッドに、縦ブス状に電線を引き下ろしており、線下用地を極めて効率的に上手く使用している。
右写真は、上記と同じ送電線で、淀川変電所から新鳥飼変電所地点を経由して2基目の鉄塔で、上記鉄塔の1Kmほど手前の鉄塔である。
8回線の内77KV上部2回線を、ローカル変電所に引き下ろししている鉄塔である。
多回線の高鉄塔の鉄塔頂部から下部まで、左右線間を縦ブス状に電線を張り、線下用地を効率的に利用し、線路を分岐させている。
このような場合は、通常は線路の横方向にアームを伸ばし、下部に電線を引き下ろすケースが多いが、本鉄塔では線下用地内で収まるので効率的であろう。
154KV淀川西線
154KV淀川西線(写真左の鉄塔)に併架された77KV送電線を、新鳥飼変電所に引き込みするため、送電線鉄塔に横梁を設け、その先端に塔体を建設して門型形状にし、その中に縦横ブスを張り、地上に設置した変電所機器に接続する特殊構造を採用している。
一般には、変電所への送電線引き込みは、最終引留鉄塔から変電所のガントリーに電線を架線し、地上に設置した変電機器に接続している。
しかし、変電所用地の関係からか、直接引留鉄塔を特殊構造として電線を引き下ろしており、他に例をみないケースかと思われる。
右写真は、上の写真の反対側から撮ったもので、逆光で分かりづらいが、右側の引留鉄塔から縦横ブスを通して、少なくとも4回線が変電所に引き込みされているのが分かる。
なお、左側の塔体は、その背後にある別の鉄塔と重なって、構造が分かりにくくなっている。
この鉄塔は、東海道新幹線の線路脇にあり、下り列車に乗車した場合、京都駅と新大阪駅の中間、新大阪駅寄りで、車窓の左側に見ることが出来る。
33KV豊橋谷川線
写真は、33KV豊橋谷川線2回線、および33KV豊橋市田線2回線の併架送電線(平成4年建設、4回線標準鉄塔)の豊橋変電所引き出し口である。
ここでは、地中ケーブルで引き出し鉄塔(1号鉄塔)に立ち上げ、塔上で架空線と接続している。
その鉄塔構造は矩形鉄塔を採用しており、次の2号鉄塔以降の4回線標準鉄塔に対し、本鉄塔のみ特殊な構造となっている。
これは、変電所敷地が狭隘かつ、線路方向に幅が狭く、4回線標準鉄塔が建設できないためと思われ、また、ケーブル長さを極力短くするように配慮した結果であろう。
向かって左側の6相・2回線(豊橋谷川線)は、次の4回線標準鉄塔の上部回線に、右側の6相・2回線(豊橋市田線)は、下部回線に配列されている。
2.他送電線との交差点(特に下くぐり箇所)
154KV北旭線
写真の手前の154KV特殊鉄塔は、4回線の内、上部が北旭線、下部が浜岡線である。
後方に見える154KV4回線鉄塔は、上部が北島線、下部が大倉山線である。
現在は、手前の特殊鉄塔は、単に左右に電線を通過させているだけであるが、本鉄塔が建設された当初は、縦ブスが張られて、2ルートの送電線を交差・接続させていた。
現在は系統が変更され、縦ブスは撤去されている。
66KV電電武山線
66KV電電武山線は、275KV東京南線1・2号線および3・4号線の2ルートが並走している箇所で、その下くぐり交差をしている。
しかし、当該箇所は、三浦半島の起伏のある丘陵地帯で鉄塔建設地点が限られるため、狭い縦空間を通過せざるを得ない。
その対策として、地上高を確保しつつ、かつ275KV線路との離隔を確保するため、鉄塔はドナウ型形状とし、更にジャンパ線はLPがいしでアームの上部を通過させている。
66KV八沢線・桂川線
66KV八沢線(2回線標準型)、桂川線(2回線標準型)が並走している区間で、154KV都留線(写真左後方)から分岐(分岐鉄塔は、写真の右側にあり、写っていない)して神奈川県営相模発電所に至る送電線を、下くぐりしている箇所である。
それぞれ、1回線水平配列の鉄塔2基、両線路合わせて計4基で交差している。
上の写真と反対側から撮影したものである。
3基しか写っていないが、左枠外にもう1基がある。
写真上部の電線が、154KV上部横断線路である。
右側後方に見えるのが、一般箇所の66KV八沢線の標準鉄塔である。
上部交差の154KV送電線の方が後から建設され、その時に既設66KV送電線を建て替えしているが、交差部分の建設費の総合的経済性を追求した結果であろう。
66KV登戸線
66KV登戸線は、そのルートの途中でJRの送電線と交差し、その下くぐりをしている。
右写真はその交差箇所の写真であり、門型鉄塔として水平配列にして、22KV1回線送電線を下段に併架している。
後方に見えるのが、一般箇所の標準型鉄塔である。
右写真の左上部に見える電線が、上部交差のJR武蔵境・新鶴見線の電線である。
下部併架の送電線は、22KV小田急向ヶ丘線である。
66KV川角線
66KV川角線は、中東京変電所を起点とする武州線から分岐し、日高変電所に至る、こう長約1.5Kmの送電線である。
こう長が短い送電線ではあるが、そのルートは新所沢変電所及び中東京変電所に近いため、4本もの超高圧送電線の下くぐりをしている。
すなわち、新所沢線、安曇幹線、中東京幹線、および奥秩父線(旧東京西線)の下くぐりをしている。
したがって、狭い縦空間を通過せざるを得ず、数基の鉄塔は、特殊鉄塔として建設されている。
右写真はその内の1基で、矩形鉄塔を使用し上段2相、下段4相の配置としている。
この鉄塔は、グランドワイヤ引留および2段アームの結構に特徴があり、特にめずらしい形状をしている。
66KV本牧線
66KV本牧線は、線間間隔を狭めた4回線矩形鉄塔の送電線である。(左側写真)
そのルートの途中に275KV東京南線と交差し、下くぐりをする箇所がある。
この箇所については一般箇所における左側の写真のような高い鉄塔高は採れない。
しかし、市街化の進展が顕著なため、2回線2ルートにして横方向に線路幅を広げることが難しい。
そこで交差箇所については、右側の写真のように各アームに4相の電線を配置し、高さを低くした設計として交差している。
右側の矩形鉄塔は、特に特殊な鉄塔ではないが、交差点における適用例として掲載した。
矩形鉄塔は多回線設計鉄塔として標準型の鉄塔に比べ、大変柔軟性のある鉄塔であると言えよう。
66KV碓氷線
右写真は、66KV碓氷線(左から右へ経過)、66KV榛名線(後方から本鉄塔まで)、66KV北高崎線(本鉄塔から手前方向へ)の3線路が交差接続されている箇所で、かつ、その上空を275KV中東京幹線が経過(写真には写っていないが左右に横断)している下くぐり箇所の、極めて特殊な地点の鉄塔写真である。
狭い縦空間の場所で3線路を交差接続させるために、門型を左右に2基密着させて並べたような、2回線・2段水平配列の特殊な鉄塔になった。
所在地は、高崎市下小塙町である。
このような設計の鉄塔は、極めてめずらしい。
4.特殊鋼材使用
220kV中四幹線(ボックス鋼材)
中四幹線は、瀬戸内海を横断して、本州の広島変電所と四国の伊予変電所間を結ぶこう長125Kmの220KV送電線である。
本送電線は、昭和37年に電源開発株式会社により建設された。
本送電線の最大の特徴は、長距離の瀬戸内海・海峡を横断するため、径間長が最も長い箇所(広島県竹原市忠海床浦~同市忠海町大久野島間)で2,357mとなり、我が国で最も長い径間長を記録したことである。
同時に鉄塔高は海面上42mの電線高さを確保するため最も長い径間長の鉄塔では214mの電線支持点高さ(上相)を必要とし、更にその上部に12mの避雷針高さを加えて鉄塔全長226mとなり、我が国で最も高い鉄塔となった。
海峡横断部の高鉄塔部材には、強い荷重に耐える必要があるが、一般に使用されている等辺山形鋼では強度が不足するため、高強度で断面性能が良いボックス型鋼材を主柱材に使用している。
また、腹材には溶接組立結構部材を使用している。
右写真は基礎立ち上がり部分であるが、特殊腹材の様子がよく分かる写真である。
なお、昭和34年に関門海峡横断送電線として九州電力が建設した220kV新関門幹線でも本鉄塔と同様の四角断面の溶接構造材という特殊構造が使用されている。
その組立工事では、作業員は過去に経験したことが無く、組立作業には大分苦労したとのことである。
110kV都城串良線、他(爆接(NAB)継手)
送電鉄塔に鋼管材が使用され始めた初期段階で、主柱材のジョイント部分に主に使用されていたフランジ継手に代えて爆接継手が開発されたことがある。
目的は、フランジ継手は製作に溶接が必要で高価になることと、溶接による歪みや残留応力の問題もあり、ジョイント部分のスマートさが欠ける点など克服しようとしたものである。
昭和40年頃九州電力および東京電力管内で建設された例がある。
右写真は、九州電力が昭和41年に建設した110kV都城串良線の爆接(NAB)継手の施工写真である。
主柱材のベンド点以外のジョイント部分に爆接(NAB)継手が使用されている。
右写真は上記の110kV都城串良線のNAB継手施工状況を撮ったもので、雷管を装着しているところである。
この写真は、東京電力が昭和41年に建設した66kV内房線で使用されたNAB継手を撮ったものである。
鋼管径は139.8mmである。
NAB継手は主柱材が上下同径以外の異径箇所でも適用できるが、右図はその概要を示したものである。
スリーブには、予め横方向に溝(スリット)を掘っておき、爆着した際には鋼管材がその溝に食い込み密着するようになっている。
昭和40年代当初に、ごく一部で使用されたNAB継手は、消音装置を適用しても爆発の際に大きな衝撃音が鉄塔付近に発生するため、環境問題からその後は使用されていない。
66kV袖ヶ浦環線(H鋼)
送電線路が直角に曲がるような荷重条件の厳しい鉄塔では、主柱材に加わる応力が大きくなり、一般的に使用されている等辺山形鋼材では経済建設面から不利になる場合が生ずることがある。
そのような鉄塔では、現在では鋼管材の使用が推奨されるが、昭和40年代に等辺山形鋼材および鋼管材によらない対応も試みられている。
右写真は、東京電力が昭和44年に建設した66kV袖ヶ浦環線のDR型鉄塔である。
ベンド点以下の主柱材がH型鋼、腹材T型鋼が使用されており、他に例を見ない鉄塔である。
この写真に見られるように、等辺山形材とのジョイント、幅の異なるH鋼のジョイント、および腹材の接続設計など鉄塔製作面では数々の困難があったように思われる。
最下パネルでは腹材にT型鋼が使用されている。