エジプトの送電線
Egypt
2010.07.01 新設
I have not traveled in Egypt.
However, Mr.Masahiro Ogawa of my friend traveled in Egypt and has photographs of power transmission lines.
And he consented to use his photographs for my homepage.
Because this page was completed by his photographs, I thank him very much.
エジプトについては、ピラミッドをはじめとする世界遺産が数多くあり、魅力的な国なのでぜひ旅行をしたいと思っているもののまだその機会がなかった。
先般、私の友人である小川正浩氏と会う機会があったので当サイトのことを話したところ、仕事の関係でエジプトに行ったときに撮った写真があり、それを提供していただけることとなった。
本項で掲載する写真はすべて小川正浩氏の撮られた貴重な写真であり、当サイトで使用させていただけることに厚く御礼申し上げる次第であります。
エジプトは、ご承知の通りナイル川河口のデルタ地帯に開けた古代からの都市、すなわち首都カイロ及び地中海沿岸のアレキサンドリアの周りに人口が集中しており、面積は日本の2.6倍あるもののほとんどが砂漠である。
したがって、電力需要はカイロ~アレキサンドリア~ポートサイド~スエズに囲まれた狭い範囲に集中している。
電力系統については最大電力が2007年度に1,970万kWで、それほど大きなものではない。
最大使用電圧は、上記需要に対応するには220kVでも十分と思われるが、1970年に完成したアスワンハイダムの電力を約800km北のカイロまで長距離送電するために、初めて500kV2回線送電線が運転開始された。
さらに将来の需要増(至近年度の電力需要の伸び率は年約6.5%)と安定した電力供給に対応するため500kV系統が拡充されて、2008年現在500kV送電線回線延長は約2,500kmとなっている。
電圧階級は500~220~132~66~33kVである。
1.500kV送電線
この写真は、1970年にアスワンハイダム発電所の出力を首都カイロに送電するために建設された送電線を撮ったものである。
送電線は1回線2ルートの2回線送電線でこう長は約800kmである。
懸垂鉄塔は、奥に見える3相水平配列・各相直吊りのがいし装置で自立型鉄塔である。
ルートはほとんど砂漠を経過し直線ルートで懸垂鉄塔が連続しているが、20~25基毎に保安耐張として手前に見える各相独立の鉄塔を設けている。
また、角度箇所はすべて各相独立の鉄塔を適用している。
この写真の箇所ではがいしは懸垂がいし1連33個連結で、電線は3導体である。
スペーサは2導体用のものを3個組み合わせて使用している。
耐張がいし装置は電線1条にがいし連を対応させて3連逆正三角形配列方式を採用している。
標準的径間長は約400mである。
また、外側線幅は約24mで、各ルート間隔は中心位置間で概ね100mである。
上記と同じ送電線で、高速道路横断の様子を撮ったものである。
送電線の設計・建設はロシアの技術によったものだそうである。
西欧の技術によって建設されていれば、恐らく400kV級の送電線になったのがロシアの技術を導入したため500kVになったものと思われる。
アスワンハイダムからの送電線が完成して以降、500kV送電線は800km以上にわたり建設されているが、それらは全て右写真のようなえぼし型鉄塔送電線である。
すなわち、
・カイロ~アレキサンドリア方面
・カイロ~スエズ方面
・カイロを取り囲むリング系統
の送電線が、えぼし型鉄塔で建設されている。
右写真は、カイロからアレキサンドリア方面に建設した送電線を撮ったものである。
ちょうど架線工事の緊線作業が完了したところで、これから金車に乗っている電線を懸垂クランプにセットする直前の写真である。
写真の奥に見える煙突が地中海に面して建設された火力発電所で、この送電線はここで発電された電力をカイロに送電するために建設されたものである。
電線はACSR490m㎡ 3導体、がいしはガラス懸垂がいしで当鉄塔が地中海海岸に近く塩害重汚損地区のため連結個数は多く一連43個連結である。
鉄塔アーム幅(外側線電線幅)は30mであり、平均的な鉄塔高さは40mで、平均的鉄塔質量は20tonである。
このカイロからアレキサンドリア方面送電線は、日本が送変電系統建設コンサルタントを行ったもので、2008年に建設したものである。
右写真は、架線工事の緊線作業が完了し、ジャンパ取り付け工事寸前の耐張鉄塔である。
写真の付近は、水深の浅い湖の縁にルートを取るため鉄塔建設用地の部分だけ埋立して工事を行っている。
左手前が進入路でその幅は狭く、鉄塔敷地埋め立て面積は小さいので、地盤軟弱と思われるものの基礎工事はさほど大掛かりな工法を用いたものではないようだ。
耐張がいし装置はアスワンハイダム送電線と同様で、電線1条ごとに一連装置で対応する逆三角形配列の3連耐張であり、一連がいし個数は48個で上記懸垂鉄塔と同じ場所で懸垂装置より5個多くなっている。
2.220kV送電線
右写真は地中海に面したアレキサンドリアの近くに建設された火力発電所からの送電線引き出し口を撮ったものである。
画面には写っていないが、向かって右側が発電所で、左方向に送電線が引き出されている。
手前から220kV送電線が4ルート、及びその奥に上記で解説した500kV送電線と更に別の500kV送電線の計2ルート(いずれも建設途中)が写っている。
上記写真220kV4ルートのうちの3ルートが首都カイロ方面およびナイル川河口のデルタ地帯方面に延びている様子である。
これら送電線は3ルートとも電線が2導体で220kV送電線としては送電容量が大きい1回線当たり60~70万kW程度の送電容量を有する送電線であろう。
当ルートは、地中海海岸に近く塩害重汚損地区のため連結個数は多く一連21個連結である。
3ルート中、中央の送電線だけがオフセットが付いているがエジプトでは降雪はないのでオフセットを付けた理由がよく分からない。
220kV送電線の耐張鉄塔写真である。
電線は各ルートとも2導体で、耐張がいし装置は水平2連であり、一連がいし個数は19個である。
この鉄塔はルートの水平角度が約30度で、ルートが大きく曲がっている所に適用した鉄塔であり、基礎に作用する荷重が大きくなるため大型の基礎が必要になる。
そこで、重角度鉄塔では根開きを大きくとって基礎に作用する圧縮及び引き上げ荷重を低減させて基礎を小型化し工事費を安価にする設計を採用することが多いが、この鉄塔もそのような根開きの大きな設計になっている。
我が国では広い鉄塔敷地を確保することが難しく、土地価格が高価なため重角度鉄塔でも根開きを拡大することは殆ど無い。
しかし、西欧ではこのような根開きの大きな鉄塔が多く見られる。
copyrights © Tower Line Solution Co.,Ltd.