154KV以下の単導体送電線で、最も多く見られる。
送電線路の水平角度が小さい箇所は、単純に引留クランプ間に電線を吊り渡す形状になっている。
ジャンパ線が風で横振れしても鉄塔塔体とは十分に離隔距離が確保でき、閃絡を生じないようにしている。
各種ジャンパ線
1.最もシンプルなジャンパ線(手作りジャンパ線)
(1)単導体ジャンパ線(標準)
(2)単導体ジャンパ線(支持がいし装置使用)
直吊懸垂型ジャンパ支持装置
ジャンパ線支持がいし装置では、最もシンプルな懸垂がいし装置を用いたものである。
右写真は154kV送電線の例である。
この装置では、風によるジャンパ線の揺れにより、がいし連結部で僅かな火花放電を発生させて付近のTV受信に障害を起こすことがあるので、連結部を導電体(ボンド線)で接続させたり、最下部に錘を使用しその現象を防止することが必要となることが多い。
長幹支持がいし装置
送電線路の水平角度が大きく外カーブ側のジャンパ線が塔体に接近してしまう場合などに、ジャンパ線が横振れしないように、がいしで支持・固定する装置が比較的多く用いられている。
横振れ抑制装置としての支持がいし装置は、154KV以下の電圧の低い送電線では長幹がいしが多く用いられている。
V吊懸垂型ジャンパ支持装置
また、懸垂がいしまたは長幹がいしのV吊がいし装置を用いることも多い。
V吊がいし装置に懸垂がいしを使用するときにはジャンパ線は軽いので風によって風下側のがいしが浮き上がって接続部金具が擦れ、局部的に微小な火花放電を発生させて、付近のTV受信に障害を起こすこともある。
したがって、その現象を発生させないよう、右写真のように錘りを必ず使用することが大切である。
(3)単導体ジャンパ線(補強装置使用)
海岸付近の塩害対策設計地区で、がいし個数が多い箇所であるとか、その他の理由でがいし連長が長くなり、ジャンパ線が長大になる箇所では、ジャンパ線が大きくなり、風による横振れ時閃絡防止対策のため大きな空間を確保しなければならない。そこで、大きな鉄塔を建設せざるを得ないが建設費を抑制するために鋼線などでジャンパ線を補強して、ジャンパ線の大きさを小さくすると共に横振れ範囲を狭くする対策を用いることが行われている。
補強線によってきれいに成形されている。
(4)多導体ジャンパ線(標準)
多導体ジャンパ線では、2導体またはごく初期の4導体送電線に見られる。
電圧の高い多導体送電線では、僅かの構造縮小が建設費の減少に大きく寄与するため、特にジャンパ線形状につていは極力小さく形成するよう創意工夫を重ね、最近では無補強のジャンパ線は殆ど建設されていない。
現在、多導体送電線の標準的ジャンパ線は右写真のように補強装置を用いたタイプのジャンパ線である。
(5)多導体ジャンパ線(支持がいし装置使用)
単導体送電線と同様、送電線路の水平角度が大きく外カーブ側のジャンパ線が塔体に接近してしまう場合などに、ジャンパ線が横振れしないようにがいし装置で固定することが比較的多く用いられている。
横振れ抑制装置としてのがいし装置は、ほとんど懸垂がいし使用のV吊りがいし装置を用いている。
場所によっては、ジャンパ補強装置と併用して単吊りの懸垂がいし使用の装置を用いている箇所もある。
275KV4導体送電線長幹V吊支持がいし装置
超高圧4導体送電線の直吊懸垂型ジャンパ支持装置である。
風によるがいし金具の擦れによる微小局部的火花放電の発生により付近のTV受信に障害を起こすを防止するために重錘を設置している。
2.プレハブジャンパ装置
超高圧多導体送電線では、僅かの構造縮小が建設費の減少に大きく寄与するため、特にジャンパ線形状につていは極力小さく形成するよう創意工夫を重ね、最近では電線メーカーの工場であらかじめ製作したジャンパ装置を、建設現場では取り付け作業を行うだけで完成させる方式に移行している。
2導体用プレハブジャンパ装置
8導体用プレハブジャンパ装置
3.特殊ジャンパ装置
ジャンパ線には、いろいろな形状のものがある。
その鉄塔の系統構成上の位置づけ、例えば撚架鉄塔であるとか、定期的にジャンパ解放を行う箇所であるとか、塔上でのケーブル接続箇所などで特殊なジャンパ線が作られている。また、その鉄塔のおかれた立地条件からも各種の工夫されたジャンパ装置が施設されている。
鉄塔上でケーブルと接続する場合にはジャンパ箇所で接続することになるので限られた狭い場所で接続するためいろいろな工夫がなされている。
ここでは出来るだけいろいろなジャンパ装置を掲載する。
撚架鉄塔用ジャンパ線
長距離送電線の場合には三相の各電線の対地との離隔(地上高)をほぼ等しくさせて各相に流れる電流を等しくさせることが必要になる、そこで送電線の途中で電線の配置替え(撚架:ねんが)をすることが必要となる。
ちなみに、この電線の配置替えをする鉄塔を撚架鉄塔という。
右の写真は66KV送電線の撚架鉄塔である。
撚架は送電線の起点~終点間で2回行うことで各相とも対地に対して同一の条件になるので、長距離送電線では区間を最低3等分して最低2基の撚架鉄塔を適用している。
右径間の上相は左径間の中相に移行、
右径間の中相は左径間の下相に移行、
右径間の下相は左径間の上相に移行、
以上の通り電線の配置換えをさせている。
ジャンパ開閉操作可能なジャンパ装置
系統構成上、定期的にジャンパ解放をする必要がある箇所では、ジャンパ線に簡易な断路器を設けて対応している箇所がある。
右写真は66KV送電線のそのような箇所の例である。
上向きジャンパ線
地上高の制限から通常のジャンパのように下方に電線を配置できないので上方にジャンパ線を配置するなどの例である。
右の写真は、66KV送電線が275KV送電線の下くぐり交差をしている箇所で電線地上高が低いので、ドナウ型鉄塔とすると共に、ジャンパ線をラインポストがいしで上方に施設している。
ケーブルヘッド分岐ジャンパ線
鉄塔上部で架空線から地中ケーブルに直接接続する場合は、右写真のようにジャンパ線から電線をT分岐させてケーブルヘッドに直接接続する。
最近は、市街地における架空・地中接続箇所において開閉設備を設ける用地の確保が難しいので、架空・地中接続を開閉設備を介さないで右写真のように直接接続する例が多い。
ブロッキングコイル設置用ジャンパ装置
送電線の電線に、電力系統運用に必要な各種の通信信号を乗せて電気所(発電所、変電所、開閉所など)間で送電線・変電機器を制御することが行われている。
このシステムを電力線搬送方式と呼んでいる。
この方式は、通信回線を別ルートで建設しなくても送電線を通信回線として利用するので便利である。
しかし、送電線の途中に分岐箇所が多いと、通信信号を分岐ルートに乗せないようにブロックする右写真のようなブロッキングコイルを設ける必要があり、そのために経費が嵩む等のデメリットが生じる。
最近は、各種通信信号については、マイクロ波無線または架空地線の光ファイバを用いた高性能デジタル方式を用いる方式が適用できるようになり主流となっているが、一部では今も昔からの電力線搬送方式が使われている。
右写真は、本線から分岐したルート(左側)に通信信号が流れるのを阻止するようにジャンパ線にコイル(ブロッキングコイル)を設けた例である。