モロッコの送電線
Morocco
2016.05.27 新設 2017.01.31 更新
Ms. Chieko Kawakami traveled in Morocco in 2016.The photographs of this page is the power transmission line photographs which she took during a trip.
モロッコの送電線については、川上千衣子氏が平成28年(2016年)にモロッコ旅行をされた際に撮影された写真を、当サイトにご提供頂いたものである。以下に掲載をさせていただけたことに厚く感謝を申し上げる。
川上千衣子氏は、一般社団法人・送電線建設技術研究会事務局に長年勤務され、送電線工事業界に多大なご尽力頂いた。特に、同研究会発行の「ラインマン」の編集には心血を注がれ、送電線工事関係者には広く親しまれる読み物となっている。
さて、モロッコは日本人にとっては不朽の名作「カサブランカ」の舞台として馴染みが深いと思われるが、現在の国情を知る人は少ないと考えられる。そこで前置き的に若干国情と送電線について触れておきたい。
1.モロッコ王国 主要基本データ(2016.05.25調べ現在)
(注)写真は在日モロッコ王国大使館の公開情報から: 地中海に面する北部は温暖な地中海性気候。 4000m級の山があるアトラス山脈には十分な降雨、また積雪もあります。 南部一帯は砂漠性気候です。
首都 ラバト
面積 約45万k㎡
人口 約3252万人(2012年世銀)
民族 アラブ系65%、ベルベル系30%
言語 公用語はアラビア語、ベルベル語、フランス語
宗教 イスラム教(国教:スンニ派がほとんど)
政体 立憲君主制
通貨 モロッコデイルハム (MAD,1モロッコデイルハム=11.2868円)
2.エネルギーと電気事業体制
石油と天然ガスの確認埋蔵量は少なく、モロッコでは国内石油消費をほぼ輸入石油でまかなっている。
1963年に設立された国有のモロッコ電力公社(ONE:Office National de I’Electoricite)が、垂直統合型事業者として発送配電事業を行なっている。 2007年末時点で発電設備約500万kW が設置されており、その内訳は水力(揚水発電含む含む)約1700MW 、石油火力約600MW 、石炭火力約1800MW、その他(風力発電含む)約900MWとなっている。
3.モロッコ電力公社の送電線亘長
区分 電圧別送電線亘長(単位:km)
400kV 225kV 150kV 60kV
2003年 700 6400 300 9600
2004年 700 6500 320 9700
2005年 700 7000 130 10000
2006年 1200 7200 140 10300
2007年 1300 7200 140 10400
モロッコの送電線(その2)
Morocco No.2
Masami Ohara worked for Furukawa Electric built a OPGW of 2400km in Morocco since 2003 until 2014.He safely build a OPGW of 16000km with the Indian and Filipino workers all over the world.
サハラ砂漠にたたずむラクダ
本サイトでは2016.05.27にモロッコの送電線について追加掲載した。その際モロッコに関する送電線の情報収集をしているさ中、これまで当サイトへフランス、スペイン、ベネルクス等の各種送電線写真を提供して頂いた赤坂広二氏から情報が寄せられた。同氏の先輩、古河電工OBの小原正美氏がモロッコで2003年から2014年まで滞在し工事期間中に撮られた送電線の写真提供であった。
本サイト「海外の送電線」の中に「欧米送電線の建設工法」の収録はあるが、営業運転中の送電線の架空地線改修(OPGW化)工事の映像は初めてのものである。
このため早速掲載させていただくこととし、一層充実した内容にすることができたことを大変感謝している。
1.はじめに
モロッコの系統概要
モロッコには電圧は60kV, 150kV, 225kV, 400kVの架空送電線がある。
過去のONEE(モロッコの国営電力・水道公社)の資料によればモロッコの送電線系統図は下記の様である。
2.60kV送電線
60kV送電線は1回線と2回線があり、下の写真は耐張鉄塔と懸垂鉄塔の代表的なものを示す。耐張は鉄塔が、懸垂鉄塔はコン柱が一般的である。また碍子は耐張はガラス碍子、懸垂はシリコン支持碍子である。懸垂鉄塔には微風振動対策と思われる添え線が付いている。
3.150kV送電線
150kV 送電線は1回線と2回線がある。
碍子はガラス碍子である。
4.225kV送電線
225kV送電線は基本的には1回線のバンザイ鉄塔でまれに2回線もある。
碍子はガラス碍子である。
下の写真はOPGWの活線張替工事中の写真で有る。
砂漠?地帯で有るが線下まで車で移動可能である。
5.400kV送電線
2回線鉄塔で碍子はガラス碍子である。
下の写真は400kV 2導体の送電線で、ジャンパ線は張架ジャンパとなっており上下のアーム間距離が長い。
GWは2条用のアームはあるが片側のみ架線されている。
6.OPGW活線張替工事(以下は小原正美氏談)
モロッコで2003年より完全活線状態でのOPGW張替工事がスタートし、現在までに約2,400㎞を施工してきた。
電圧は60kV, 150kV, 225kV, 400kVとモロッコ電力(ONEE)の全ての送電線電圧に対応して来た。
日本とは違い電力より一切電気を止めることなく施工することを要求され、当初日本式の吊金工法で対応したが完全活線状況では問題が多発し、工法、工具を新規に開発することが必要である。
225kVの一部と400kVでは既設のGWが無い状態であったため、この活線張替には全く発想を変えた工法の開発も行った。
下はかの有名なジブラルタル海峡(写真前方はスペイン)を望む400kVでの工事中の写真である。
世界中の開発途上国では迂回路が無いために完全活線状況下でのOPGW張替工事を要求される。1998年のインドを皮切りに古河電工(VISCAS)では現在までに約16,000km以上の工事を世界中で施工して来た。
日本では想像もつかないような劣悪な状態での送電線もあり、それを活線状況下で工事を行うには多くの危険も伴うが、安全第一を心がけ作業員はフィリピン、インド人を使い、現在も下請けでは無く直営として施工を続けている。
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